私戦予備罪は「外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者は、3月以上5年以下の禁錮に処する」というものだ。
数日後、容疑者として任意の事情聴取したいと警察から電話が掛かってきたが拒否し、弁護士を選任した。警察からの連絡はそれっきり途絶えた。常岡さんは今に至るまで、取り調べを一度も受けていない。
時効ギリギリに送検、不起訴
2019年7月3日、警視庁公安部は常岡さんら5人を書類送検した。「私戦予備」の時効は5年。ギリギリの状態だった。
常岡さんを弁護する清水勉弁護士は、東京地検の担当検察官に被疑事実を問い合わせた。どんなことを疑われているのかが分からないと、弁護方針を立てることはできないからだ。
しかし検察官は「捜査中」として回答を拒否した。文書で問い合わせても同様だった。清水弁護士は「これまで37年の弁護士人生で、被疑事実を伝えられないのは初めて」という。
そして東京地検は7月22日、5人全員を刑事裁判に問わない「不起訴」とした。
最後まで説明ないまま
この際も、なぜ不起訴なのか説明はなかった。また不起訴には、検察官の心証として無罪という不起訴と、有罪の心証がありながらも裁判にはしないという「起訴猶予」など、いくつかの種類がある。その説明もなかったという。
常岡さんは、具体的に自分のどの行為に対してどんな疑いをかけられて家宅捜索をうけ、書類送検されて不起訴となったのか、全く分からないままの状態に置かれているという。
そこで日弁連に人権救済を申し立てて、検察に対して警告を発するように求めた。
常岡さんはこう話した。
「私自身は普通に仕事をしているだけのはずなのに、毎度毎度、私戦予備という容疑をかけられたり、旅券の返納命令を受けたりと、前代未聞の事態が起きる。今回は、自分がどう疑われたのかすらも、分からない。私自身はおかしなことをしているとは思わない。外務省、検察庁から、なぜなのか説明を求めたい」
(了)