徳島県鳴門市クリーンセンター(同市瀬戸町堂浦)のごみ焼却炉から出る排ガスを巡り、有害物質の濃度表示が国基準値を超えないよう、2008年4月の操業開始当初から設定されていたことが市への取材で分かった。メーカーの三機工業(東京)が独断で設定した可能性もあるが、市は本当に知らなかったのか、地元住民の間で不信感が募っている。
市によると、2基ある焼却炉は2008年4月の操業開始で、1日最大各35トンのゴミを処理できる。排ガスに含まれる窒素酸化物、硫黄酸化物、塩化水素、ばいじん、一酸化炭素の5種類の物質をセンターの煙突そばで測定し、データ(最大、最少、平均値)をまとめている。平均値の結果は、センター前の電子表示板やホームページなどで公表していた。
問題発覚は5月下旬で、上田公司市議(共産)がセンターを視察した際、中央制御室の端末で「ピークカット設定」との表示に気づいた。同行の市職員も知らなかったため、三機工業に問い合わせると、平均値が基準値以下に表示されるように設定していたことを認めた。
廃棄物処理法施行規則では、排ガス中の一酸化炭素濃度は100PPM以下の状態でごみを焼却するように定めている。ピークカット設定の結果、100PPM以上を測定すると99PPMと表示されるようになっていた。6月12日に設定を解除すると、同23日までの12日間で、一酸化炭素の1時間平均は国の施行規則で定める100PPMを6回上回り、19日正午には276PPMという高い値を測定した。他の4物質についても施行基準の値を下回るよう設定されていたが、解除後に基準を超えたことは今のところないという。
市は「メーカーが独自に設定していたもので、市は関与していない」としている。ただ、08年の操業開始以降、市は第三者機関に有害物質の測定を依頼。その第三者機関からは、一酸化炭素について、基準値を超える測定結果が複数回提出されていながら、何ら対応せず、「放置」していた実態が最近になって判明。市はこの点について、「結果は、課長含む担当者4人ほどで回覧していた。担当者が異動したので、COが基準値を上回っていたことに気づいていたかは、分からない」と釈明しているが、市側でも早い段階で測定値操作に気付く機会があったことになり、市民の不信感を増幅させている。
三機工業広報IR部の担当者は取材に「すでに退職した当時の責任者を含め、関係者に聞き取りなどをして経緯や目的を調査している。鳴門市民の方には大変迷惑をおかけして申し訳ない」と述べた。市は今後、三機工業からの調査結果を踏まえ「地域全体に説明していきたい」としている。
排ガス「基準超え」非表示11年 「メーカーが独自に設定」鳴門市ごみ施設 - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20190726/k00/00m/040/062000c