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他方、トレードマークのヒゲを剃った山口氏は、当初こそ表情に余裕が見られたものの、原告側の弁護士の追及が進むにつれて、しどろもどろになる場面がいくつも見受けられた。
特に、以下の質疑は、山口氏の主張の矛盾を浮き彫りにするものと言える。
(原告代理人)ホテルの居室内でのベッドの移動について伺いたい。ホテルの部屋の中には浴室のすぐ隣りにベッドA。窓側にベッドBがあったんですよね。詩織さんが部屋に入ってベッドについてからのあなたと詩織さんの位置関係を説明してもらえますか?
(山口氏)陳述書に書いています。
(原告代理人)書いてありますが、言ってください。まず、詩織さんはどちらのベッドに寝たんですか?
(山口氏)ベッドAです。
(原告代理人)あなたはどのベッドに?
(山口氏)それはいつの話ですか?
(原告代理人)寝た瞬間。
(山口氏)寝た瞬間は私がそこ(ベッドA)で(詩織さんを)寝かしていますから。
(原告代理人)あなたが寝たベッドはどちらですか?
(山口氏)ベッドBです。
(原告代理人)性行為はどちらのベッドで?
(山口氏)ベッドAです。
(原告代理人)そうすると、詩織さんはベッドAに寝ていて、あなたがベッドBにいたんだけど、あなたがベッドAの方に行って、性行為をした。そういうことですか?
(山口氏)はい。
(原告代理人)あなたが事件後に書いたメール甲1号証の25を示させていただきたいんですけども、“ゲロまみれのあなたのスラックスをぬがせ、あなたを部屋に移して、ベッドに寝かしました(とメールに書いている)”。ここで言うベッドというのはベッドAですか?
(山口氏)はい。
(原告代理人)“そして、トイレに戻って、吐き散らかされたゲロをシャワーで洗い流して、もっとも、ゲロが付着していたブラウスを明朝着るものがないと困るだろうと水ですすいでハンガーに干しました。そして、部屋に戻ると、あなたはすでにいびきをかいて寝ていました。私はあなたの髪の毛についていた嘔吐臭に耐え切れずに別のベッドで寝ました”この別のベッドはBのことですか?
(山口氏)そうです。
(原告代理人)“その後、あなたは唐突に立って、戻ってきて、私の寝ていたベッドに入ってきました”と書いているんですが、この“私の寝ていたベッド”というのはどちらですか?
(山口氏)ベッドAです。
(原告代理人)ベッドA?
(山口氏)そうです。
ここで、傍聴席からざわめきが起こった。というのも、寝ていたベッドがいつのまにかBからAに移動しているからだ。これに対して、山口氏は以下のように釈明している。
(山口氏)(この“寝ているベッド”というのは、)“この私のホテルの私が寝ているベッド”という意味です。というのは、ベッドBというのは、私、そのベッドカバーを壊してないんですよね。ひとりでしたから。ですから、ここのニュアンスは当時、妊娠してしまった、働けなくなる、というメールがきている伊藤さんに対して、私の泊まっている、私のホテルに、あなたが酔ったせいで結果的に、私のベッドに入ってきたんだと責めるために書いたものですけど、ここ、表現が不正確かもしれませんけど、それは、私が本来、寝ていたベッド(本来、寝るはずだったベッド)という意味です。
(原告代理人)そう読めますか?
(山口氏)私はそう書いたんだから。
滑稽とも言える物言いに、傍聴席からも失笑が漏れたのである