電通で過労自殺した新入社員の女性。それを伝えるメディア側の働き方について、同世代の女性たちに話を聞きました。
Kota Hatachi
籏智 広太 BuzzFeed News Reporter, Japan
本当に辛かったサツ回り
「電通の長時間労働を批判する記事を書いているのは、自己矛盾じゃないかなと感じました」
全国紙の新聞記者として働いてきた20代女性は、BuzzFeed Newsにこう語る。伏し目がちなまま、こう続けた。
「社会にいくら訴えても、自分たちが変わらないと説得力がないですよね」
彼女自身も、長時間労働に苦しんできた一人だ。現状を少しでも訴えたいと、今回の取材に応じてくれた。
特に大変だったのは、事件事故の担当をしていた時だった。特に、毎月のように事件があったある1年間は、「本当につらかった」と振り返る。
全国紙の新聞記者は、ほとんどの場合、入社後すぐに地方に配属され、警察取材、通称「サツ回り」で鍛え上げられる。あらゆる事件の情報が集まる警察署で、取材力を磨き、なにかが起きた時の瞬発力をつけるためだ。
その日に事件や事故が起きるかどうかは、神のみぞ知る。人口が多い地方に配属されれば、忙しさは確実に増す。
火事や大事故、殺人事件が起きれば、いつどこにいようが現場や警察署などに駆けつけないといけない。寝ていても、飲んでいても、お風呂に入っていても、恋人と過ごしていても。
「移動の自由」はなかった
(中略)
もう一つ彼女を悩ませたのは、「移動の自由」だったという。新聞記者の多くは、たまの休日にも、基本的には自分が管轄する県(エリア)から自由に出入りすることはできない。
いつ、何が起きても対応できるようにするためだ。上司に理由を伝え、許可を得ることが必須だ。「友達の結婚式がある」と言ったが、上司から県外に出る許可を得られなかったことだってある。
「デスクには、『葬式なら納得できるけど』と言われました。こんなに移動とネットが発達した時代に、なんでだろうと思いましたね」
遠距離恋愛をしていた彼氏とは、長くは続かなかった。
長時間労働の温床となる「みなし労働制」
長時間労働がメディア業界に蔓延している事実は、データからもわかる大きな課題だ。
16年に始めて発表された「過労死防止白書」には、厚生労働省が企業約1万社(回答1743 件)、労働者約2万人(回答1万9583人)を対象に昨年、実施したアンケート結果が載っている。
これによると、1年で残業が一番多い月の残業時間が「過労死ライン」とされている80時間以上だった企業の割合は、テレビ局、新聞、出版業を含む「情報通信業」が44.4% (平均22.7%)と一番高い。
ただ、オフィスの出入りが激しい記者や編集者は労働時間を把握しづらいため、労働基準法に基づく裁量労働制(みなし労働制)を取り入れている職場も多い。
労使協定によってあらかじめ所定労働時間を決める制度だが、それが実質的な長時間労働の温床となっていることもある。
たとえば朝日新聞社では、裁量労働制職場の記者が記録した2016年3~4月の2ヶ月分の出退勤時間を、所属長が短く書き換えていた。BuzzFeed Newsが11月に報じている。
(全文は以下のリンクより)
https://www.buzzfeed.com/kotahatachi/newsrepoter-20-women