「この類の予測が、産業革命の黎明期からここ200年存在していたことなど承知しています。
そして、それが実現しなかったことも。基本的に狼少年のようなものです」とハラーリ氏。
「ですが、狼少年の物語の結末では本当に狼がやってくるのです。そして今度ばかりはその時なのだと考えています」
彼の見方では、人類には自らを有益な存在たらしめる2種の能力が備わっているという。
すなわち肉体的な能力と認知的な能力だ。
産業革命で登場した機械は、力仕事や反復的な作業が必要とされる現場から人間を追い出した。
しかし、その影響は圧倒的というほどでもなかった。
機械には触れることすら許されなかった認知能力がある限り、人間の働き口は概ね安泰だった。
だが、それもいつまで続くか怪しいものだ。AIは認知の分野でも人間を追い越しつつあるからだ。
確かに新しい仕事は登場するだろうが、そこで人間がAIやロボットよりも優れているという保証はない。
労働市場を変革する上で、AIに人間以上の知能は必要ない。作業をうまくこなせるだけの知能があればいいのだ。
それが実現されるのはそう遠い日ではないだろう、とハラーリ氏は予測する。
「今日の子供たちならそうした事態に直面するでしょう。
学校で学んだことの多くは、彼らが40か50歳になる頃には意味のないものとなっているのです。
彼らが引き続き仕事を確保し、世界を理解し、社会の出来事と関わり続けるには、
常に自分自身を革新し続けなければなりません。それも必要なスピードはますます早くなるでしょう」
さらにつづく