毎日新聞では何か劣勢だったようですが
憲法と安全保障を問う 対談 木村草太・首都大学東京教授、井上達夫・東京大大学院教授
http://mainichi.jp/articles/20160503/ddm/004/070/010000c
木村 私も9条の解釈はまったく同じ。違うのは、9条の例外を定めた条文が憲法にあると考えるかです。
例えば医者が手術でおなかを切るのは刑法の傷害罪の構成要件に当たるが、例外として正当業務行為を
認める規定があるので犯罪にならない。安倍政権を含めて従来政府は9条の例外を認める根拠として
憲法13条=2=を挙げている。国民の生命、自由、幸福追求の権利を保護する義務が日本政府にあるから、
それに必要な最小限度の実力を持てる。私はこの解釈は成り立つと評価をしている。ただし、集団的自衛権は
日本への主権侵害の着手がない段階での武力行使なので、生命などへの具体的な危険がなく、13条では
根拠付けられません。
井上 それは無理な解釈でしょう。刑法第1編総則の35条は、「法令または正当な業務による行為は、
罰しない」として、医療行為などは、第2編の各犯罪規定の適用除外になることを明言している。
憲法13条には、「9条2項の定めにかかわらず、国民の生命、自由、幸福追求の権利を保護するために
必要な場合には戦力を保有し、行使できる」なんて書いていない。戦力の保有・行使の禁止という重要な
憲法規範の適用除外を、明文にはないのに勝手に13条に読み込むなんて、法解釈論としては暴論です。
こんな解釈が許されるなら集団的自衛権行使だって13条で許されるという解釈もできるでしょう。
憲法解釈はこじつけ合戦になって、あらゆる憲法の条項は政治の都合で骨抜きにされちゃう。