がん治療や病気などの影響で髪が抜けた子供にウィッグを作り、プレゼントする活動を続けている大阪市北区のNPO法人「Japan Hair Donation&Charity」(略称ジャーダック)が、
献身的な活動で社会に感動を与えた市民らに贈られる「シチズン・オブ・ザ・イヤー」(シチズンホールディングス主催)を受賞した。
活動は、ジャーダック事務局長で美容師の渡辺貴一さん(45)が、美容室を共同経営する仲間と「美容師にしかできない社会貢献はないか」と語り合ったのがきっかけ。
美容室で捨てられてきた髪を病気の子供たちのために役立てようと、2009年に設立した。
ウィッグを求める子供がいれば、渡辺さんらが訪ね、頭を採寸する。後日、完成品を持って再訪し、好みの長さやスタイルに仕上げて無償で提供する。
一つを作るのに製作時のロスを見越し、長さ31センチ以上の髪の毛を20~30人分集める必要があり、当初は一つのウィッグに十分な髪を確保するのに数か月かかっていた。
それでも粘り強く続けたところ、髪の寄付の申し出や、カットに協力してくれる美容室が口コミで増えた。
メディアで取りあげられる機会も増え、人気女優が髪の毛を託したことが話題になり、活動が広く知られるようになった。
今では1日約50人から髪の毛が届き、協力する美容室は500軒以上になったという。
これまでに約90人の子供にウィッグをプレゼントしたが、まだ100人以上が順番を待っている。
採寸のほか、贈る前にカットができる美容師が不足しているのが原因で、理念を理解してくれる人材の確保が急務だという。
渡辺さんは「美容師として髪への恩返しから始めたが、想像以上の善意の広がりに驚いている。
これからも受賞を励みに一人でも多くの子供たちに提供し、善意の懸け橋になりたい」と話していた。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160323-OYTET50038/