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余剰資金
日銀はマイナス金利を導入することで、投資家たちに、ここに資金を滞留させれば損をすると伝えようとしている。
もし円高が続けば、マイナス金利幅を現在の0.1%から0.5%かそれ以上にさらに拡大することも可能だ。
マイナス金利は日本のメガバンクや企業も標的している。
東京に本拠を置くロジャーズ・インベストメント・アドバイザーズのエド・ロジャーズ最高経営責任者(CEO)は、「多くの日本企業は時価総額を超える額のキャッシュを持っている」と語る。
「日銀の量的緩和策は経済の流動性を取り戻すのを目的としている。マイナス金利は企業の保有資金を何か別のものに使わさせることを目指している」
しかし、銀行や企業は現金を溜め込み、バランスシートの改善に充当してきた。ロジャーズ氏は、日本企業の保有現金が3兆ドル(約340兆円)に上るのではないかとみている。
その一部がもし、配当引き上げや賃金引上げの原資になれば、長年不振が続く国内消費を大きく増加させるのではないかとロジャーズ氏は指摘する。
ロジャーズ氏は、「日本企業の行動やしくみを変えることを目指している。もっと株主にやさしく、被雇用者にもやさしい企業にしようとしている」とし、「マイナス金利は安倍首相や黒田総裁が日本の構造改革を強く決意していることを示している」と語った。
人口減
そこまで肯定的でない見方をする人もいる。日本企業が賃金を上げたり、国内でもっと投資しないのは全くもって論理的だという見解だ。
ジャパンマクロアドバイザーズの大久保琢史チーフエコノミストは、「企業の幹部は長期的な経済見通しに弱気」だと指摘する。「アベノミクスは終わり、日本はデフレに戻る。労働人口が減少している。そのため中長期的には、企業が賃金を引き上げず、雇用を増やさない十分な理由がある」と述べた。
富士通総研のシュルツ氏もそれに同意する。
シュルツ氏は、「日銀がしていることは若い経済には効き目があるかもしれない。しかし、年を取った経済には効かない。企業に投資させようとしているが、企業は海外に向かう」と指摘した。
過去3年間、安倍首相は日本の「アニマル・スピリット」を目覚めさせようと努力したが、分かったのは「人口は運命」という古くからの格言がいかに正しいかだ。
イノベーションへの抵抗
大久保氏は、「安倍首相は移民受け入れに否定的なので、一部は彼の責任でもある」と述べ、「日本は移民を歓迎する必要がある。しかし安倍内閣は右派の国粋主義者が大半なので、移民受け入れは実現しない」と語った。
日本の重要性が失われるわけではない。日本は世界最大の債権国であり、主要な輸出企業は世界で最も有力な企業群に入る。
しかし日本経済は、人口が急速に高齢化し減少する成熟した状態だ。国内の企業では、ヒエラルキーが深く根付き、イノベーションに抵抗する年長者が力を持っており、企業も「年老いて」いる。
日本の富の多くは高齢者が所有している。彼らは資産価値を守りたいと考えていて、インフレを恐れる。
これでは、日本で再び「アニマル・スピリット」が目覚めるとは考えられない。
「アベノミクス」の3本の矢
・金融政策の矢――デフレ対策に通貨供給量を拡大
・財政政策の矢――経済の需要刺激のため政府支出拡大
・構造改革の矢――経済の生産性と競争力拡大のための構造改革
(英語記事 Off target: Is it the end of 'Abenomics' in