GDPマイナス成長 アベノミクスの終焉か
2016年02月15日 BBC
ルーパート・ウィングフィールド=ヘイズ東京特派員
http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-35576396
私たち「アベノミクス」の終わりを目撃しているのだろうか。世界3位の経済をデフレから脱却させる壮大な努力は、失敗したのか。
先月末には、日本銀行が初めてマイナス金利を導入し、未知の領域に足を踏み込んだ。先週は、日経平均株価は8%近く下落し、過去2年の上昇を打ち消す水準まで低下した。きょうの発表で、国内総生産(GDP)がまたもや縮小に転じたことが明らかになった。
安倍晋三首相と、首相の右腕の黒田東彦日銀総裁にとって、いずれも悪いニュースだ。しかしこれは2人のせいなのか。2人の計画はもう運が尽きたのか。
アベノミクスをめぐっては大げさな表現が色々と飛び交ってきた。おカネをどんどん刷ろうという日銀の一大増刷計画は「カネを吐き出すバズーカ」と呼ばれている。
日銀の黒田東彦総裁は、20年続くデフレに打ち勝つため、「できることは何でもやる」と繰り返してきた。しかしアベノミクスの根幹はリフレーションではない。円安誘導することだ。
成長の牽引役
なぜか。安倍首相と、首相に助言してきた人々は、日本経済を簡単に復活させる唯一の手段は輸出拡大だと知っているからだ。
富士通総研のマルティン・シュルツ上席主任研究員は、「日本経済をリフレ策によって再生させることができ、『アニマル・スピリット』も再び生まれると信じる人が少数いる。ただ、それを信じる人は少ない」とした上で、「今の日本には成長の牽引役がない。そのため、輸出が成長の最も大きな要素となっている」と語った。
シュルツ氏は日本経済の成長率1%あたり0.5~0.7%分が輸出によるものだと指摘する。
理由は簡単だ、日本の人口は高齢化し、減少している。2020年には、人口減少が毎年60万人規模になる。そのなかで経済を成長させるのは非常に難しい。
しかし、日本は依然として工業大国だ。理論上は、日本製品が海外でもっと安くなれば需要は増加するはずだ。
円安
そのため、2012年から14年にかけて、対ドルでの円の為替レートは意図的に引き下げられた。1ドル=80円くらいだったのが1ドル=120円まで円安が進んだ。
大手の輸出企業にとっては、毎日がクリスマスだったようなものだ。2014年のトヨタ自動車は180億ドルと過去最高の利益を記録している。
だが、おめでたい状況に水を差す要因が2つある。一つは為替レートが突然円高に転じたこと。もう一つは、日本企業が棚からぼたもち的に得た利益を頑なに使おうとしないことだ。
日本政府にとっては円高の方がずっと頭が痛い問題だ。過去2週間で円は1ドル=120円から112円まで急上昇した。
これを受け、黒田日銀総裁はマイナス金利を初めて導入するという劇的な策を取った。
富士通総研のシュルツ氏は、「日銀は円高が進むまでマイナス金利を導入しようと思っていなかった」と語る。突然の円高は、ドイツや米国、中国という海外の要因が引き起こしたものだ。世界経済が不安定になると、投資家たちは資金を「避難先」に動かすが、日本も避難先の一つなのだ。
(>>2以下へ続く)