タワーマンションは「グローバル化」で自治崩壊へ
富裕層や若者に人気のタワーマンションの住民とて、「例外」ではない。むしろ、より深刻な「管理不全現象」が勃発している。
都心のあるタワーマンション。高層部は億ションとなる超優良物件で、住民たちが頭を抱えているのがマンションの「グローバル化」だ。
複数の中国人が高層階の部屋を購入して住み出したが、日本人住民は生活習慣の違いに唖然。磨き上げられた共用部にたんや唾を吐く、ラウンジスペースで酔って寝る、エレベータ内で飲食をするといった問題行動が頻発している。
そこで管理組合の理事会で話し合おうとしたところ、中国人は、「理事会は中国語でやってくれ」、「管理規約を中国語にしろ」などと反発。日本人住民vs.中国人住民の対立がおさまらないまま、いまもラウンジスペースでは中国人のどんちゃん騒ぎが響き渡っているというのだ。
住宅ジャーナリストの榊淳司氏が言う。
「中国人住民がマンションの一室を友人にホテル代わりに貸し出し、そこで夜な夜な宴会騒ぎが行われる。ベランダから小便をしたり、共用施設のプールで大騒ぎしたりという例も聞きます。もちろんこうしたマンションの価値は下がってしまう。
しかも、中国人が『爆買い』したマンションが続々と完成するのはまさにこれから。タワーマンションが集中する湾岸エリアは、これから本格的にチャイナタウン化していく可能性がある」
タワーマンションを巡っては、「日本人vs.中国人」だけではなく、「上層階vs.低層階」の対立が暗い影を落としているから問題は根深い。
というのも、タワーマンションは高層階に住むのが高所得者、低層階にはそこまでゆとりのない層といった風に、住民の所得格差が大きいという特徴がある。
「そんな両者の対立がマンション価値を大きく下げかねない」と、不動産コンサルタント・さくら事務所の土屋輝之氏は指摘する。
「実は'90年代からリーマン・ショック頃までに『タワマン・ブーム』で売れに売れた物件が、これから一気に大規模改修を迎えます。しかも、タワーマンションの修繕は多額を要するうえ、現在は建設資材や人件費の高騰が重なり、当初見込まれていた修繕積立金では対応できない可能性が出てきました。
ここでネックになるのが、高層階と低層階の所得格差です。高層階に住む高所得者が修繕のための追加負担に応じたとしても、低層階の住民が負担増はきついと反対。管理組合で両者のコンセンサスが取れず、修繕がうまくいかなくなるリスクが浮上してきた」
中国人、高層階、低層階という3者のバトルがマンション自治を崩壊させ、マンションそのものの価値を落としていく。そんな「負の連鎖」がいままさに巻き起こり始めているわけだ。