そもそも審議会が開催されることになったのは、都の人口が2020年にピークを迎えることへの危機感があったから。
さらに、全国的に世帯主の年齢が60歳以上のマンションが約5割を占めるなど、マンション住民の高齢化が急速に進展しているとの事情もあった。
そうした中で、現在どのようなマンション問題が発生しているのか、新たにどのような問題が噴出しそうか。審議会では専門のマンション部会を設置したうえで、プロたちがリアルな実態を次々と明らかにして、答申にまとめた形である。
もちろん、これまでもマンションの2020年問題については、業界内外から指摘されてきた。東京五輪開催に向けてマンション業界は大盛況だが、ブームは五輪終了とともに急速に萎み、価格の値崩れが始まると……。
しかし、この審議会はそうしたブーム終焉の是非にとどまらず、より根深いマンション問題の実態に踏み込んだところに特徴がある。たとえば、前述した部会の議事録には、次のような不動産業界の「裏話」までが赤裸々に綴られている。
「分譲業者が、外国企業にまとめて売却してしまうと、そのマンションの区分所有者の大半を外国企業が占める(中略)その多くは管理費や修繕積立金について認識が薄く、所有者となってからまったく支払わないなど、深刻な滞納問題が生じている。このままでは管理組合の財政そのものが破綻してしまう可能性がある」
要するに、表立って語られなかった「真の2020年問題」の数々を明るみに出してしまったことで、「これが価格暴落の引き金になる」と業界は大慌てなのである。
首都圏郊外では200万円でしか売れない物件も
審議会で特に問題視されたのが、「管理不全マンション」なるものだ。
マンション住民でつくる管理組合が崩壊、それがきっかけでマンションの維持・管理が適切に行われなくなり、マンション価値が地滑り的に下落してしまう物件のことを指している。
聞き慣れない言葉かもしれないが、全国で多発。マンション価格の暴落に直面して、頭を抱える住民が急増している。
東京・世田谷区の人気住宅エリアに建つ8階建てマンションに住む、岡田拓也氏(仮名、53歳)はそんな一人である。
約5000万円で購入した2LDKの部屋を売りに出そうとしたところ、「1000万円台でないと厳しい」と仲介業者から突きつけられたことから、悲劇が幕を開けた。
駅からは徒歩5分圏内で交通至便。相場感覚では4000万円前後で売れると思っていた矢先、「地震でエレベータホールの壁に亀裂が入った。当然、修理が行われると思っていたら、そんな様子もない。どうしてかと調べてみたら、とんでもないことが起こっていた」(岡田氏)。