http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/08/post-3824_1.php
中国の周恩来元首相はかつて、「外交とは、手段を変えて続ける戦争のことだ」と言った。同じことは今のユーロ圏
にも当てはまるかもしれない。
EU(欧州連合)は、戦争がヨーロッパに残した憎しみを癒し、ドイツに復興の主導権を握らせるために設立された。
決してドイツにヨーロッパ支配を許すためではない。しかしこの夏、債務に押し潰されそうなギリシャに過酷な緊縮政策
が強いられたことで、両国の間にはかつてない敵意が生まれている。憎しみは国境を超えて他のEU諸国にも押し寄せて
おり、EUの政治的経済的未来に多くが疑問を抱いている。
対ギリシャ金融支援の合意によれば、ギリシャは最高860億ユーロ(940億ドル)の金融支援を受ける。急進左派
連合(SYRIZA)が率いる連立政権はその代わり、さらなる緊縮を行い、付加価値税を引き上げ、規制に縛られた
ギリシャ経済を自由化しなければならない。また、500億ユーロ(551億ドル)相当の国有財産を民営化ファンドに売却
することも決められている。
ギリシャ議会はこの条件を7月16日に承認したが、反発は凄まじかった。SYRIZAの議員ゾエ・コンスタントプロウは、
この条件は「社会的大虐殺」にも等しいと言った。穏健派の議員たちでさえ、厳し過ぎる条件は国内の恐怖と不安、
怒りを煽るだけだと言っている。
しかもギリシャには厳しい監視がつく。約束を守っているかどうかを逐一見張らせるためだ。「これはほとんど警察の取り
締まりだ」と、ギリシャのアンドレアス・パパンドレウ元首相は言う。「(見張りを付けたのは)ドイツ納税者を納得させるためだが、
ギリシャ市民はさらに不信を募らせるだろう。国債発行によるギリシャの資金調達はますます困難になり、歳入は借金の
返済にあてられる。こうした重荷のいくらかは、軽減されるべきだった」
一方で、借金を返す見込みもないギリシャに数十億ユーロを貸し込んだヨーロッパの銀行のほうはお咎めなしだ。「麻薬
中毒の責任は自分にある。だが売人にも責任の一旦はある」と、イギリスの元欧州担当相で、『Brexit: How Britain Will
Leave Europe(ブレグジット--イギリスはいかにヨーロッパを離脱するか』の著書があるデニス・マクシェーンは言う。「フランス
やドイツ、オランダの銀行は無謀な貸し付けを行ってきたが、いちばん責任を押し付けやすいのがギリシャがだった」
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