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本当の恐怖は先送りの後に来る
とはいえ、既にGDP比205%(1035兆円)まで積み上がってしまった借金を、無計画にこれ以上積み重ねるわけにもいかないので、
政府も一応の財政戦略というものを持っている。その骨子は、2023年度まで政府の借金をGDP比で220%程度(1250兆円程度)
までに抑え込む、というものだ。
先ほど述べたように日本人の金融資産は1700兆円程度あり、またこの時期までは労働人口の減少も本格化するわけではない。
そのため、この程度の借金を重ねても日本が財政危機に陥ることはないだろう。
このように日本の政治は、日本人の過去に蓄積した膨大な金融資産に依存して政府が借金を積み重ねることで、人口構造が
変化することに伴い生じる社会保障の問題の抜本的改革を先送りし続けている。
問題はこうした「先送り」がいつまで続けられるのか、ということだろう。今のところ政府は2023年度までの先送り戦略を持っているが、
日本人の金融資産を考えるとその先もしばらく先送りが可能なのかもしれない。しかし本当の恐怖はその「先送り」の後にやってくる
ということがデータ上見えてくる。
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/d/5/450/img_d58b7bd31cb8195cc6671586c195cb4f30033.jpg
キーとなるのは経済成長率だ。日本の労働人口減少が本格化するのは団塊ジュニア世代の引退する2035年から2040年ごろに
かけてと考えられている。簡単に考えると経済の規模は「労働生産性(一人ひとりが稼ぐ金額)×労働人口(働き手の数)」で決まる
ので、この時期から日本は経済成長することが極めて困難になってくる。場合によっては経済がマイナス成長することも考えられ、
そうなると必然的に政府の税収も減ることになる。
一方、高齢者人口は「団塊ジュニア世代」が「団塊の世代」に取って代わる形で、あまり減少しない。こうして「人口が減って経済が
縮小し税収が減るのに、社会保障費の負担は減らない」という絶望的な状況が生まれることになる。
その結果、急速に借金が増加し、日本人の金融資産で日本政府の国債を買い支えられなくなり、財政危機が起きることが予測
される。その時が「将来世代への社会保障への先送り」という「日本型シルバーデモクラシー」の終焉、ひいては民主主義自体の終焉
となるであろう。
シルバーデモクラシーを乗り越えるために
(以下略)