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2012年度時点では年金、医療、介護を合わせた日本の社会保障給付費の総額は109.5兆円だった。これはGDPの22.8%に
上る膨大な金額である。
これが2015年度になると団塊の世代が年金の受給を開始した影響で、たった3年でさらに10兆円も拡大し、119.8兆円となった。
GDPに占める社会保障給付費の割合も23.5%まで上昇している。
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社会保障給付費の60%が社会保険料収入で、残りの40%が税金によって賄われているので、この間に政府の財政負担も
4兆円増えた計算になる。
こうした社会保障給付費の増加傾向は今後とも変わらず、政府の予測では2025年には給付総額は148.9兆円と現状からさらに
30兆円拡大することが予測されている。これは追加的に12兆円もの政府の財政負担が増えることを示している。
数値の単位が大きすぎて「12兆円」というのがどれくらい財政にインパクトを与えるかということは分かりづらいかと思うが、日本の
防衛予算は5兆円、教育・科学技術予算が5.3兆円、公共事業費が6兆円程度なので、財政規模を拡大せずに12兆円を捻出
するには「自衛隊をつぶして、公共事業をすべてやめて、公教育を半減する」くらいの措置が必要となることになる。
ただ実際にそんなことをすれば教育や治安や安全保障がめちゃくちゃになり、別方面から不満が噴き出すことになるので、当然、
政治的にはそのような無茶な決断は行われないことになる。
代わりに当座の社会保障財政の苦境をしのぐための方策として、日本の政府は1700兆円に上る国民の豊富な金融資産から
借金を積み重ねることで問題の先送りを図っている。この「政府の国民への借金を通した社会保障財政問題の先送り」こそが
「日本型のシルバーデモクラシー」の特徴である。
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このような選択が取れるのは、日本が世界有数の金融資産を有する国であるからこそである。ギリシャよろしく他の多くの国が
このようなアプローチを取ろうとしても、政府の借金を増やす過程で国民の金融資産が早々に尽きて外国から借金を重ねることに
なり、どこかのタイミングで財政危機を迎えることになってしまう。なんだかんだ言っても日本が「豊かな国」であるからこそ、このような
「先送り」という現象は起きているのである。