2015年 06月 30日 15:14 JST
Marco Vicenzino
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPKCN0PA0GA20150630?sp=true#3
[29日 ロイター] - チプラス政権が銀行休業と資本規制に踏み切るなか、ギリシャはかつてないほどユーロ圏離脱に近づいている。
国民投票の実施というチプラス首相の決断は、少なくとも当面はユーロ圏や国際債権団との交渉を事実上終わらせるものだった。
加えて、支援の1カ月延長を求める土壇場でのギリシャの要求を、ユーロ圏財務相会合は全会一致で拒否した。もし国際通貨基金
(IMF)のラガルド専務理事が、返済期限である6月30日の後にギリシャは正式に債務不履行(デフォルト)したと宣言するなら、
同国はジンバブエやキューバやソマリアと肩を並べるデフォルト国家となる。
ギリシャは事実上、経済的にグローバル市場でのけ者扱いされるだけでなく、外交的にも「ならず者国家」として見られることになるだろう。
チプラス首相率いる急進左派連合(SYRIZA)は、国民投票の目的を民主主義の実践だとしている。SYRIZAの主張によれば、
ユーロ圏首脳や国際債権団は、民主的に選ばれたギリシャ政府を倒そうと企んでいる。したがって、国民投票はギリシャ国民が民主的
な意思決定を取り戻すために必要なのだという。国民投票によって、ギリシャの未来を自分たちで決めることができるというのだ。
このように説得力に満ちたストーリーは、SYRIZAの支持基盤と先の総選挙で同党に投票した有権者36%の感情に火を付けるものだ。チプラス首相は国民投票を、緊縮策と国家の威厳の対立構造に仕立て上げるだろう。本質的には、ギリシャがユーロ圏に残留するかどうかを決めることになる。
国民投票を行う背景には、チプラス政権の5カ月にわたる債権団とのハイリスクな瀬戸際交渉が裏目に出たことがある。そして今、責任
あるリーダーシップと厳しい選択の時が来ている。国民投票を実施することでチプラス首相は責任を放棄し、代わりに、この極めて困難な
状況を国民に「丸投げ」したのだ。
チプラス首相は明らかに、ギリシャの長期的な国益よりも、自身が率いる政党の短期的な利益、つまり政治的な生き残りと党の結束を
優先している。欧州と合意に達することは、SYRIZAの分裂とチプラス政権の崩壊というリスクを負うことになる。党内の強硬派は、
一段の緊縮策を課すような支援条件には断固反対する姿勢を示している。
もしチプラス政権が国益に従っていたら、今年1月後半の首相就任直後にも債権団との交渉を真剣に始めていただろう。国民投票も
必要とあらば、6月の支払い期限前の5月までに適切に行われていただろう。
ギリシャの野党勢力は、SYRIZAが常にユーロ圏離脱を計画しており、それが意図的であろうと愚かな選択であろうと、「グレグジット
(ギリシャのユーロ圏離脱)」に向かっていたと主張する。
経済安全保障に対するチプラス首相の向こう見ずとも言える無関心さは、ギリシャと欧州を極度の危険地帯へと引きずり込んでいる。
チプラス政権が国民投票を実施するなら、崩壊のリスクは依然として現実であり続ける。欧州におけるギリシャの未来が決まり、欧州
統合の構想自体を方向づけることになるだろう。
実際のところ、ギリシャは7月5日の国民投票前にデフォルトし、ユーロ圏を離脱する可能性さえある。