楽しかった記憶を刺激すると、マウスのうつ症状が改善―理研
http://www.zaikei.co.jp/article/20150619/255088.html
理化学研究所・脳科学総合研究センターの利根川進センター長、 スティーブ・ラミレス大学院生らの研究チームは、
マウスの海馬の神経細胞の活動を操作して過去の楽しい記憶を活性化すると、うつ様行動(動物がストレスを
与えられた時の行動変化。ヒトのうつ病 症状と類似)が改善できることを発見した。
一般的に使われているうつ病治療薬の効果は個人差が大きく、そ の克服は容易ではない。また、最近は薬だけではなく、
精神療法や経頭蓋電磁刺激法といった治療法も試みられているが、未だ有効な治療法として確立されていない。
今回の研究では、オスのマウスにメスのマウスと一緒に過ごすという楽しい体験をさせ、その時に活動した
海馬の歯状回の神経細胞を遺伝学的手法により標識した。
次に、そのオスのマウスに体を固定する慢性ストレスを与えて、「嫌な刺激を回避する行動が減る」「本来なら好む
甘い砂糖水を好まなくなる」といったうつ様行動を確認し、その状態で楽しい体験の記憶として標識された海馬歯状回の
神経細胞群に光をあてて人工的に活性化したところ、うつ状態が改善することが分かった。
さらに、このうつ状態の改善は、海馬歯状回から扁桃体基底外側部を通り、側坐核の外側の殻であるシェルと呼ばれる
領域へとつながる回路の活動によるものであることが分かった。
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楽しい体験の記憶細胞群の標識方法を示す図。メスと過ごして楽しい体験をした時に活動する神経細胞だけに、
チャネルロドプシン 2(ChR2)というタンパク質を作らせることで、この体験に対応する記憶痕跡の細胞群を標識できる。
(理化学研究所の発表資料より)
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マウスのうつ様行動のイメージを示す図。マウスの体を一定時間拘束するというストレスを与えると、マウスは尾で
つるされるといった嫌な刺激を回避するためにもがく行動が減る、本来なら好む砂糖水を好まなくなる、といった
うつ様行動を示す。(理化学研究所の 発表資料より)