シャープ社内に広がる失望と不安 1割人員削減するのに「気持ちをひとつに…」
2015.6.6
2度目の経営危機を招いたシャープの高橋興三社長が社内の求心力低下に苦しんでいる。
巨額赤字と新中期経営計画の発表 後、社内で上映した緊急ビデオメッセージでは「期待を裏切る結果に申し訳ない」と謝罪に追われた。
希望退職の募集について社内文書で「痛みを伴うものもあるが、やり切らなければ明るい未来を描くことはできない」と全社一丸となった再建を呼 びかけるが、社内の反応は冷ややかだ。
リストラ優先で成長戦略が不透明な再建策に失望と不安が広がっている。(松岡達郎)
■相次ぐ社内説明
5月14日午後。シャープのイントラネット(企業内通信ネットワーク)に「気持ちを新たに、そしてひとつに」と題した高橋社長のメッセージが掲載された。
同日午後3時すぎ、平成27年3月期連結決算と新しい中期経営計画を発表する記者会見を社内にリアルタイム中継するにあたり、自らの思いを社員に訴える狙いがあった。
「皆さん、高橋です」と始まり、「きっと非常に厳しい質問がたくさん来ると思うが、しっかり見てください。その上で一丸となり、『もう一度シャープを再生させる』という強い気持ちを皆で持ちたい」と呼びかけた。
決算会見のリアルタイム中継は、新中期経営計画について沈黙を守った経営陣に対し説明責任を求める声に応じた初の試みだった。
本社ビルの大会議室には300人以上の社員が見守った。
ただ、会見が始まり、期待がしぼんでいくのに時間はかからなかった。
リストラによる固定費削減が目立った再建策に「銀行の言い分ばかり飲んだのか」と次々と席を立っていった。
ある工場では机をたたきながら「なんでこんなことになるんや」 と叫ぶ社員もいたという。
■根深いしこり
結局、新中期経営計画には3500人規模の希望退職募集を含めて、世界の全社員の1割程度を削減することが盛り込まれた。
本社売却も検討し、社員の給与・賞与もカットすることで 年間285億円の固定費を削減する。
リストラ策が並んだことに対し、高橋社長は社内文書で 「(再建策には)痛みを伴うものも含まれているが、これをやり切らなければ明るい未来を描くことはできない」と強調した。
一方で会見で、高橋社長は「経営が間違っていなくて、こう (経営危機)なるわけはない」と経営責任は認めたが、「身を引くのはひとつのやり方だが、経営危機の原因となった外部環境の変化に強い会社にするのが私の責任だ」と強調した。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/150606/bsb1506061711001-n1.htm