シンポジウムの終盤。再び半谷氏が聴衆に質問した。
「放射性物質の摂取制限なんてものは取り下げて、自由に食べさせて。心配 な人はホールボディカウンターで測って管理すればいい、こう思う人は 青!」
医師らの安全神話を聞いた参加者たちは、全員一致で賛成の青のカードを上 げた。
「おっ、これ、できるとは思わなかった」と半谷氏は笑う。
会として「きのこなどの摂取制限を取り下げてほしい」という要望書を、内閣府の食品安全委員会に提出するそうだ。
国は福島県の「放射線被ばくによる健康不安対策事業費」として、平成27 年度に7億8千100万円を計上した。
前年度の4千400万円から比べる と、15倍以上の増額だ。
その中には、住民に対して放射線の安全性を説明する “リスクコミュニケー ション”の費用も含まれている。
このシンポジウムのホームページには、「参加する専門家の渡航費・交通費 は、東京電力が福島復興およびリスクコミュニケーションの一環として負担 しています」と書かれている。
かつて国や自治体、東電が一体となって原発安全論をふりまいていたように、今度は放射能安全神話を刷り込もうとして いるのか。
原子力賠償の弁護をしている井戸謙一弁護士は言う。
「内部被ばくや低線量被ばくに危険がないという社会的認識を広めることは 東電だけでなく原発を推進する勢力にとって好都合。シンポジウムにお金を 出しているのは東電でも、背後には原発でお金もうけしたい勢力の意向が働 いている可能性もあります」
東電にも真意を聞いたが、「東電の原子力安全改革を監視する原子力改革監 視委員会の副委員長バーバラ・ジャッジ氏の意向によるものだ」と、答える にとどまった。
今後も、安全神話をふりまく会が開催されるのだろうか。
そんなお金があったら、除染や避難せざるをえない人の補償に回すべきではないのか。
21時を過ぎてようやくシンポジウムが終わり、司会の半谷氏がこう呼びか ける。
「みなさん、イノハナご飯を別室に用意しているんで、食べて帰ってくださ いね!」
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