小林節に聞く
権力者はやりたい放題、国民の義務ばかりが増える 日本人が知らない自民党憲法改正案の意義とリスク
http://diamond.jp/articles/-/39334
――憲法改正を地道に唱えて来たのは、 どういう人たちなのですか。
基本的に、復古主義の人たち。明治憲 法下で生まれ育った岸信介元首相らが始 めた「自主憲法期成議員同盟」「自主憲法制定国民会議」などの会員が
母体にな っています。一方で、自民党の政務調査会の中に憲法調査会もあり、建前上は憲法議論をそこでやることになっていました。
憲法論議はお金にも票にもならないか ら、必然的に憲法マニアが集まります。顔ぶれを見ると世襲議員が多い。
選挙区の地盤がしっかりしているから、票集めに使う労力を憲法論議に割けるわけです 。
また、彼らの先祖は代々由緒正しいエ スタブリッシュメントの家柄で、権力側 の立場にあった。ところが、第二次世界 大戦に日本が負けて、
権力を削がれてしまった。そのため、占領軍に対する屈辱の気持ちもあり、「米国に押し付けられた日本国憲法を改正したい」という動機に
つながっている部分もありそうです。そういう人たちによって、「押し付け憲法論」「明治憲法復古論」などが自民党内で脈々と続いてきた。
――そうした人々が、足もとの憲法改正 論にも影響を与えているのですか。
過去3年間、野党だった自民党は時間が ありました。加えて、野党時代の自民党で生き残っていたのは、選挙地盤がしっかりしている世襲議員が多かった。
そうした事情もあり、自民党内の「明治憲法郷愁派」のような人たちが中心になって 、今回のような改憲案が出て来たのでは ないでしょうか。
自民党はある意味、非常によくできた 組織です。あたかも「分担総合病院」のようなもので、党議決定すれば皆逆らわない。
政務調査会の中の部会や調査会で議論した結果が党の総務会で通ると、そ れが党全体の決定とみなされ、党議拘束 がかかるからです。
そういう流れで、自民党の中の特殊なアナクロニズム的な人たちの決定が、党議決定となって表に出て来てしまったわけです。
それに加えて、安倍晋三首相が政治の 第一線に復活した。改憲論者の岸信介元首相の孫ですから、当然「今の日本国憲 法は屈辱だ」という考え方が、
彼のDNAの中にも流れているのだと思います。だから安倍首相は、歴代内閣と違って「 憲法改正は我が内閣の使命だ」と明言しました。
■日本国憲法のよいところは堅持し 現状に合わない部分は変えるべき
――憲法改正論議が表に出てきたことは 、いいことなのでしょうか。それとも、 悪いことなのでしょうか。
私も改憲論者なので、改憲論が表に出 てきたことによって、議論の素地ができること自体はいいことだと思います。
しかし、自民党案をこのまま認めるわけに はいかない。私は改憲論者と言っても、 「護憲的改憲論者」。
日本国憲法のよい 部分は堅持するべきだし、一方で現状にそぐわなくなった部分は、車をモデルチェンジするように、変えるべきだと思っ ている。
それが私のスタンスです。その立場から言えば、今回の自民党案の多くには相容れないものがあるため、意見を同じくする識者たちと一緒に異を唱えて います。
ただ、私たちの批判を自民党は受け入 れたくないようです。
先日、参議院の憲 法審査会に呼ばれて、自民党議員に対して自説を述べ、改正案に反対したのですが、彼らはなかなか納得してくれません 。