■「年金は大丈夫」
――若い世代は現行の年金制度がいずれ行き詰まるのではないか、と不安を抱えている人も多いかと思います。年金制度は大丈夫でしょうか?
年金は大丈夫です。なぜかといいますと、年金の問題は単純だからです。年金と医療、介護では、問題の難しさの程度が格段に違います。
年金というのは給付が増えるといっても、年金をもらう高齢者の数が増えるのと同じ程度にしか、総額は増えません。
また、すでにマクロ経済スライドが導入されていて、物価が上昇していけば、物価の上昇以下にしか年金の給付額は上がりません。
つまり、給付額は実質、どんどん抑制されていきます。そういう面で、年金給付総額はたかだか高齢者の人数が増えるペースか、それ以下のペースでしか増えません。
さらに年金は単なるお金の問題です。保険料をとって給付を払う。保険料の改定と給付水準の改定によって、年金制度の持続可能性は維持できます。
実際に年金については2004年改定で、保険料の上限が決まり、マクロ経済スライドで給付の抑制が決まっています。給付額が減ることはあっても年金制度そのものの破綻はあり得ません。
ところが、医療、介護は全然違います。さきほど申しましたように、これから75歳以上の高齢者が特に増えてきますから、高齢者の増加ペース以上に、医療や介護を受給する人のウエイトが増えてきます。
医療と介護の給付はノンリニア(非線形)に増えていきます。
また、医療と介護は、単なるお金だけの問題ではありません。コストは保険料で徴収しますが、給付はお金で払うものではないからです。医療サービスや介護サービスとして提供します。
サービスを提供するお医者さん、看護師さん、薬剤師さん、介護士さんといったサービス提供者が不可欠です。介護労働者をどう確保するのか、といった深刻な問題も出てきます。
年金に比べれば、医療や介護はそのサービスを提供する人の問題がかかわってくるだけに、ずっとずっと難しくて複雑なのです。
そういう意味でいえば、若い人は年金制度の持続可能性について、そんなに心配する必要はありません。むしろ医療や介護の仕組みの将来を心配した方がいいと思います。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/05/14/japan-social-security_n_7281818.html