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本山町では、米軍機の低空飛行によるごう音が激しくなった九〇年から記録を続けており、多い年で三百回を超える飛来がある。
今年も六月末までに六十三回の低空飛行が確認され、このうちオスプレイとみられる米軍機は五回。機体やプロペラの動きがはっきり確認できるほど低く飛んでいたこともあった。
愛媛県でもオスプレイの目撃情報は相次いでいる。これまでオレンジルートでの訓練と思われる飛行が七回あり、松山、新居浜、西条市で計七十五件の目撃情報があった。このほかにも、より原発に近い大洲市や内子町などで六回十九件目撃されているという。
オスプレイの低空飛行訓練が始まった今年三月、愛媛県は国を通して米軍に、原発上空などを飛行しないとする「日米合意の順守」を申し入れた。
伊方原発上空を米軍機が飛んでいたのは、その直後のことだ。
「結局、オスプレイも伊方原発上空を飛びよるかもしれない。これでは、いくら『飛ばさない』と言われてもとても信じられない」。伊方原発から約十キロの八幡浜市に住む「八幡浜・原発から子どもを守る女の会」の斉間淳子さん(69)が憤る。
原発の新規制基準では、航空機などが墜落した場合の対策として、冷却作業を遠隔操作する第二の制御室の設置が求められているが、五年間の猶予が認められている。
四電は伊方3号機の再稼働に向けて安全審査の申請をした。申請があった全国の六原発十二基のうち、伊方3号機が再稼働の条件が最も整っているとされる。大きな津波は来ないとされているため、大がかりな防潮堤は必要ない。事故時の対応拠点・免震重要棟の設置も済んでいる。敷地内の活断層も今のところ見つかっていない。
だが、地震想定の甘さはたびたび指摘されているほか、事故が起こった場合の町民の避難計画もまだ策定されていない。佐田岬半島に住む人々は海を越えて避難するしかないが、天候に左右されやすいヘリや船を利用するしかない。
今月十六日にあった原子力規制委員会の安全審査会合では、四電の役員が伊方3号機の特徴を踏まえた安全対策を問われたのに答えられず、規制委側から「自分のプラントにどういう特徴があるのか答えられないのは問題だ」と指摘される場面もあった。四電は、伊方3号機の燃料棒に付着物があったことを愛媛県に二カ月間報告せず、厳重注意を受けた。
近藤さんは「福島原発事故を起こし、多くの避難者を出した国が、おざなりな安全審査で原発を再稼働させるようでは、どんな悪い冗談か。まして、その頭上では、米軍が好き勝手に訓練している。立地自治体の住民の命を軽んじ、不安もお構いなしの状況は、何一つ変わってはいない」と話した。
<デスクメモ>
伊方原発の再稼働には、愛媛県の人たちだけでなく、海を挟んだ大分県や山口県の人たちも大きな不安を感じている。もし、事故が起きれば、放射能は海を渡ってくる。良好な漁場として知られる豊後水道や瀬戸内海までが汚染されてしまう。
米軍機が墜落するはずがないなんて、信じられるわけがない。
ソース
東京新聞:再稼働もくろむ伊方原発 米軍機墜落の恐怖:特報(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013072602000171.html