愛知県内大手のゼネコン「矢作建設工業」(名古屋市東区)が手掛けた大規模開発事業に絡み、地権者約100人に対し、土地の交換や売却の特例が認められないとして、名古屋国税局が計約2億円を追徴課税していたことがわかった。地権者は「特例が認められる」と持ちかけられ、所得税の減免を申告するなどしたという。
開発をめぐり、これほど多くの地権者が特例を取り消され、追徴を受けたのは極めて異例という。地権者の一部は「課税の説明が
いい加減」と、同社などを相手に損害賠償を求める訴訟を検討している。
問題となったのは、名古屋市中川区のほぼ中央に位置する約8万2800平方メートルに、75区画の宅地造成と大型スーパー
などの商業施設を建設する事業。同社が2012年5月から開発を進め、すでに整備された。
関係者によると、追徴課税された約100人のうち約30人は11年、開発区域の所有地と同じ区域の別の土地と等価交換した。
この場合、取得の土地が「交換目的で取得したものでない」などの時には交換特例とみなされ、課税はされない。
しかし、国税局は「約30人が交換で取得した土地は、矢作建設工業が交換用に用意したもの。特例は認められない」とし、
譲渡とみなして計約12億円の申告漏れを指摘したという。
また、交換の重複者を含む約90人も、開発区域内の所有地を同社に売却した。この所有地が優良住宅地造成のための特例
と認定されると、売却で得た所得のうち2千万円以下の部分には一般税率15%より軽い10%の軽減税率が適用される。
しかし、国税局は「開発区域には商業用地が含まれるため特例を認めない」とし、約90人は一般税率と軽減税率の差額、
計数千万円を追徴課税された模様だ。
開発事業では、三重県の不動産コンサルタントが同社の委託先から外注を受け、土地の交換や売却を取りまとめていた。地権者
には「交換で税金はかからず、売却の土地も税は軽減される」と説明したという。また、同社は税の軽減が受けられる証明書を出していた。
地権者が追徴されたことについて同社は取材に「軽減されるかわからないが、地権者の要望で証明書を出した」と説明し、コンサル
は「税金がかからないとは言っていない」と話した。(磯部征紀、的場次伸)
http://www.asahi.com/articles/ASH4L4Q09H4LOIPE007.html