今冬の米国は記録的な積雪の影響で航空便の欠航が多発した。どの便を欠航とするかは航空会社にとって頭の痛い問題だが、飛行ルートや航空機の機種、誰が乗っているか、欠航に伴うコストといった要因によって、キャンセルされやすい便がある。
小型ジェット機が欠航になる可能性は主要航空会社が運航する大型機のほぼ3倍――。そう指摘するのは航空会社向けにデータ処理を行っているマスフライトのジョシュア・マークス最高経営責任者(CEO)だ。小型ジェット機の欠航は69%が天候や空港の混雑が原因だが、多くの乗客を運べるワイドボディ機の欠航は機材の故障や乗員不足など航空会社の事情によるものがほとんどだ。航空会社は大型機を飛ばしたいと考えている。
機体の故障で欠航を余儀なくされる場合も、航空会社にはさまざまな選択肢がある。機体の変更は日常茶飯事だ。期待が故障した便が別のルートで使用されることになっていた機体で運航されるのは、前者のほうが優先度が高いからだ。
同じフライトに誰が搭乗しているかが非常に重要な意味を持つこともある。高額な航空運賃を支払っているビジネスマンや要人が数多く乗っていて、代替機が手配できない場合、航空会社は比較的予約の少ない便か低運賃のレジャー客が多い便を欠航にして、多くの収入が得られる便を優先させるのだ。
こう言うと、乗客は「自分の便が欠航になったのは予約が少なかったから」と思うかもしれないが、航空会社で運航を担当する幹部によると、実際、航空会社はどれかの便を欠航にせざるを得なくなった場合、予約の少ない便を探すという。そのほうが不便を強いられる人が少ないからだ。マークス氏によると、レジャー客は日程を変えず、運賃の払い戻しを請求するより次の便に乗る可能性が高い。
欠航のコストに関するデータをマスフライトが検討したところ、一回の欠航で航空会社が被る損失は平均5770ドル(約70万円)。50人乗りの小型機の場合は1050ドルの損失しか発生しない。しかし、大西洋を往復する便の場合は4万2890ドルの損失になることもある。
マークス氏は「欠航にはさまざまなコストが伴う。航空会社は一般に考えられているほど欠航によって節約できているわけではない」と指摘する。
欠航に伴うコストは欠航の理由によって大きく異なる。昨年はマスフライトが集計した全ての欠航のうち、航空会社に問題があったケースが29%を占めた。こうしたケースの欠航コストは小型ジェット機で2750ドル、国内便で使われることが多いナローボディ機で1万5650ドル、長距離向けのワイドボディ機では4万2890ドルだった。
しかし、悪天候や自然災害などコントロール不能な事態による欠航コストは平均で小型機の場合が1050ドル、国内便は4930ドル、国際便は1万3140ドルだった。
こうした違いが生じるのは、航空会社が乗客に補償しなければならない金額が異なるからだ。航空会社に原因があって運航が遅れた場合、会社は乗客に宿泊料を支払う義務がり、乗客が目的地に速やかに到着できない場合は払い戻しをしなければならない。
今冬のような記録的な積雪などの事態が起きると、航空会社は減便を余儀なくされる。航空管制官が減便を指示することもあれば、乗員や地上職員が不足したり、空港や飛行機に乗ったまま多数の乗客が立ち往生することを懸念したりして減便することもある。こうした場合、航空会社は欠航にするフライトを決める。まず小型機の多くの運航が中止され、大型機が貴重な発着枠やゲートを使用することになる。
もちろん、航空会社