笹子から東京に向かうと初狩駅がありその先が大月駅
その晩の仕事は初狩と大月の中間地点
ゆるいカーブのある見通しの悪い線形の場所
点呼で職長から砕石の締め固めを命じられた俺は
通称プレートと言うエンジンで振動する道具を線路に運び込む
「肩」と呼ばれる線路両脇の砕石が山になっている部分で作業を始めたが
なぜか夢中になり隣接の下り線に最終の特急が来る事を忘れていた
24:05 列番5023M 新宿発特急かいじ123号は大月駅を発車
その3分後 夢中で作業する俺の頭の30cm横を
300トンを超える列車が時速80キロで通過した
「おい大丈夫か!」
へたり込む俺に見張員と職長が駆け寄る
「お前見張員もやってるのになんで気が付かないんだよ!」
列車見張員は担当路線のダイヤは分単位までとはいかなくても
中央本線が担当なら最終の各駅が通過したあと特急が通過
その後1時間弱で貨物が2本
観光シーズンの週末はその後にムーンライト信州が来る事くらいは頭に入っている
「当たったと思ったよ・・・」
同僚の見張員はそう言いながら俺の横でへたり込んだ