米国では健康への意識が高まるなか、塩分は悪者扱いを受けている。
米疾病管理予防センター(CDCP)は減塩を「国家の優先課題」と言っている。
同センターは塩分の摂(と)りすぎが血圧を上昇させ、心疾患や脳卒中をはじめとする
さまざまな疾病のリスクを高めると警告してきた。
一方で、こうした塩分悪玉説は大げさだとする懐疑派もいる。
実際、あまりに幅広く塩分を控えると、健康を損なうリスクを高めるとの指摘もある。
減塩賛成派は米ボストンにあるブリガム・アンド・ウイメンズ病院の心臓専門医で
心血管障害や脳卒中などについて世界的に啓蒙活動を行う米心臓協会の代表を務める
エリオット・アントマン氏だ。
一方、カリフォルニア大学デービス校栄養学部の非常勤講師デービッド・マッカロン氏は
過剰な減塩がかえって健康問題を引き起こす可能性があると警告する。
両者の意見をまとめてみた。
・賛成派―減塩は心臓疾患のリスクを軽減させる=アントマン氏
すべての人は食事に含まれる塩分の量を制限すべきだ。
理由はたった一つ。死亡リスクを減らすためだ。
米国人は総じて塩分を摂取しすぎている。
この点において大半の専門家や保健当局、科学機関の意見は一致する。
高血圧の人だけでなく、糖尿病や慢性的な腎臓疾患を持っている人
中高年、アフリカ系米国人も塩分を控えることが大事だ。
これらの人々は米人口の約半数を占めている。
しかし、残り半分は塩分の摂取量を気にしなくていいというわけではない。
肥満症の人は塩分の摂りすぎによる血圧への影響が他の人に比べて大きい。
肥満は人口の7割近くを占め、若者世代でも約3分の1に達している。
また、加齢とともに起こりがちな血圧の上昇は減塩によって著しく抑えられる。
これは重要なことだ。米国人の9割が死ぬまでに高血圧を経験する。