あるボタンを押すだけで、人類がこれまでに作った中で最も大きな装置が稼働する。
スイスのジュネーブ近郊の地下約100mに設置された大型ハドロン衝突型加速器
(LargeHadronCollider:LHC)は数週間以内に再稼働し、再び歴史的な偉業を成し遂げようとしている。
欧州原子核研究機構(CERN)では、世界がどのようにして誕生したのか
そして、ビッグバンの直後に何が起きたのかを解明するため、膨大な数の研究者たちが実験に従事している。
ほとんどの場合、研究の大躍進の功績を独占するのは、物理学者である。
しかし、彼らもIT要員の協力がなければ、偉業を成し遂げることはできなかったはずだ。
ITデータ&ストレージサービスグループのリーダーを務めるAlbertoPace氏は米ZDNetに対し
「CERNに到着したとき、私がすぐに感じたのは、ここは科学の天国だということだ」と述べた。
Pace氏によると、LHCの設置場所であるCERNで同氏が直面している難題は
「匹敵するものがない分野のものが多い」という。
Pace氏とそのチームは、歴史上最も興奮に満ちた、ヒッグス粒子を発見した科学実験に参加している。
ヒッグス粒子は1960年代に提唱されたが、研究者が実験を通してその存在を確認できたのは
ほんの数年前の2012年のことだった。
ヒッグス粒子とは、正確には何なのだろうか。そして、どのような役割を果たすのだろうか。
物理学者は、ヒッグス粒子がほかの粒子に質量を与えることは理解しているが
ヒッグス粒子の特徴の多くは現時点では謎に包まれたままだ。
世界で最も大規模かつ強力な粒子衝突器であるLHCのアップグレードにより、この不思議な粒子について
物理学者はさらに多くのことを学べるはずだ。
すべての実験は、全周27kmの円形地下トンネルで行われる。
トンネルの深さは地下50mから175mまで、さまざまだ。
このトンネル内で、2つの反対方向から粒子ビームが光速に近い速度で発射されると
粒子同士が正面衝突して、新しい粒子が形成される。新しい粒子は、LHCの検出器によって見つけ出される。
温度は摂氏マイナス270度に達し、LHCには1万1000アンペアの電流が供給される。