少子化が進み、大学全入時代にある日本で人気が集中する医学部。
「資格があり、安定していて収入も高い」というイメージが
将来への不安を抱える若者やその親を医学部受験へと駆り立てる。
その日本の医学部を今、襲っているのが「2023年問題」だ。
激震が走ったのは2010年秋のことだった。
アメリカ、カナダ以外の医学部出身者が米国で医業を行う際に資格を発行する機関である
「ECFMG」(Educational Commission for Foreign Medical Graduates)が
2023年以降の受験資格を「国際基準で認証された医学部出身者に限る」
と明らかにしたことがきっかけだ。
日本の医学生はほとんど“お客さん”
背景には、海外の大学を卒業し米国で医師免許を取得した者の教育レベルが
均一ではないということがあった。日本の医学教育は国際的に見て高いレベルだが
こと患者に接して診察・診療する「臨床」実習について言えば
国際認証基準を満たしていない。
日本の医学部の臨床実習期間は他国に比べて短い上
多くの場合は「見学型」で学生はほとんど“お客さん”扱いだからだ。
実習といっても、せいぜいカルテの下書きをするくらいである。
日本の医学部を卒業してアメリカの国家試験を受ける者は少数なので
2023年問題の影響は、直接的には大きくない。
ただ、日本の医師育成が各医学部や教員の自由裁量に委ねられてきた結果
医学教育が“ガラパゴス化”してしまっていることは、重大な問題である。