笹子から東京に向かうと初狩駅がありその先が大月駅
その晩の仕事は初狩と大月の中間地点
ゆるいカーブのある見通しの悪い線形の場所
点呼で職長から砕石の締め固めを命じられた俺は
通称プレートと言うエンジンで振動する道具を線路に運び込む
「肩」と呼ばれる線路脇の砕石が山になっている部分で作業を始めたが
なぜか夢中になり隣接の下り線に最終の特急が来る事を忘れていた
24:05 列番5023M 新宿発特急かいじ123号は大月駅を発車
その3分後 夢中で作業する俺の頭の30cm横を
300トンを超える列車が時速80キロで通過した
「おい大丈夫か!」
へたり込む俺に見張員と職長が駆け寄る
「お前見張員もやってるのになんで気が付かないんだよ!」
列車見張員は担当路線のダイヤは分単位までとはいかなくても
中央本線が担当なら最終の各駅が通過したあと特急が通過
その後1時間弱で貨物が2本
観光シーズンの週末はその後にムーンライト信州が来る事くらいは頭に入っている
「当たったと思ったよ・・・」
同僚の見張員はそう言いながら俺の横でへたり込んだ
その夜の作業を終えて終了点呼でしこたま叱られた俺は宿舎の部屋に帰って
「このままじゃ殺される なんとかしなきゃマズい」 と混乱していた
しかし何が障ってるんだ? 樹海? 土地? それとも他の何かか?
「呪いの御神木の諏訪神社か・・・」
蒸気機関車の煙と振動で枯れてしまった諏訪神社の御神木
線路まで伸びた枝を伐採しようとしてその度保線員が死んでいる
国鉄がJRに変わった今でも手を出せずに4000万の費用を掛けて防護壁を作った
いわばJR公認の呪いの御神木・・・
20代の頃によく当たると評判だった成田山の占い師に見てもらった時の事
「アンタは金運も出世運も無いねえ その代わり長生き出来るよ」
「良いものか悪いものか見えないけどとても力の強いものがアンタを護ってる」
「アンタの『気』を使いたいからその何かがアンタを護ってるんだねぇ」
その何かが原因なんだろうか?
呪いの御神木に答えがあるんだろうか?
そして次の週末 諏訪神社にトライクで向かった
20分とかからず諏訪神社に到着
掃除は行き届いているが人気がない小さい神社
「これが呪いの御神木かぁ・・・」
枯れてしまい今では切り株だけが残りその横に巨大なホウの木がそびえ立つ
この大木の枝が線路に落ちないように鉄骨のガードが作ってある
お社に参って賽銭を入れる
よくご縁があるようにと5円玉を入れる人が多いが今時5円じゃ何も買えない
「ここの掃除してる人にジュースでもおごってやってよ神さん」
そう念じつつ120円を納めて拍手を・・・ いいやせっかく静かな神社だし
神さん寝てたら迷惑だよな そう思って手だけ合わせて帰路に
不思議と嫌な感じもしなかったしむしろ居心地が良かった
鹿島神宮のそれと似ていたのはヤマトタケルゆかりの神社だからか?
それから不思議と怪現象は起こらなくなり本当に平穏無事になったのだが・・・
この話には悲しい結末が待っていた
甲府や河口湖に行く時に時間が許せば諏訪神社に寄り賽銭を入れる
仕事が忙しくて久しぶりの参拝の時は
「神さん仕事忙しくてご無沙汰ですわ
その分給料良かったから少ないけどお社の維持費の足しにしてよ」
と念じて1000円札を入れた事も何度かあった
しかし別れの時は突然訪れる
この話の次の年に俺は仙台に転勤が決まったのだ
もう参拝できないんだなぁ 縁あって通ってたのに寂しいなぁ
と思いながら笹子の地を離れた
そして仙台で働き始めてしばらくたったある日 臨時の社内報が回って来た
http://www.xanthous.jp/2014/07/18/ohtsuki-route-20-by-pass/
笹子で一緒に働いていた同僚が亡くなったのだ
単なる居眠り運転なのかそれとも俺の代わりに引っぱられたのか
同乗の職長はこと安全にはうるさい人で
居眠り防止と称して助手席でマシンガントークを展開して
絶対に居眠り運転させないと評判だったのだがなぜかこの時だけは
「気が付いたら車ごと落ちてた」 と言っていた
今は仙台から小金井に転勤して何事も無いが
いつまたあの黒い子供たちが現れるかと思うと不安になる・・・
~~終わり~~
このIDをNGリストに追加する
今後このIDの書き込みやスレッドを表示したくない場合、以下のボタンをクリックしてください。
NGリストに追加1001 :名無しさん@Next2ch:Over 1000 Threadこのスレッドは書き込み数が1000を超えました!
このスレッドは過去ログです。