さて、何から話すべきか ID:lauXx9KY

32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2021/05/24(月) 16:33:28.47 ID:lauXx9KY

陽が傾き谷に深い影がおち始める頃、土を叩いたり身体を軽く洗ったりしながら俺はずっと考えていた
果たしてこれからどう切り出そうか、と
「なぁユウヒ」
ここから出すべき一言が出ない
俺は自分の心に正直になった。俺はもう完全にユウヒの可愛さに負けている。完敗だもうずっと一緒にいたい
しかし何をしてもいいと始まったこの一件もここからはそうはいかないだろう
この約束が永続的に続くとしても、これ以上ユウヒが嫌がるのを無理やりに、というのは結局上手くいかないと思うからだ
さて、どうすればいいんだ俺は。どうすればというよりユウヒは一体俺のことをどう思っているんだろう
「ユウヒはどこに住んでるんだ」
「この山だよ」
そりゃそうだ。ここ以外どこに住んでるっていうんだ。あの耳やしっぽは間違いなく本物だった
ということはユウヒは熊なんだクマが人間をそういう対象としてみるだろうか。少なくとも人間の方はそう見ているんだが
「これからも、人に会ったら食うのか?」
「人にあったのはお前が初めて」
そんな馬鹿な、そう思ったけどぎこちなくそうか、とだけ言う
「・・・独りなのか」
「独り?山は友達」
俺の心はかなり焦っていた。次第に暗くなる山が俺とユウヒの時間を刻々と奪っていくのが分かる
言え!俺よ言え!これ以上だらだら続けるわけにはいかないんだ吠えろ!俺!言えぇぇぇぇ!!
「よ、よかったらさ、い、家おしえてくれないか」
何言ってるんだお前は!好きだから一緒にいてくれと言えよ!!ふり絞ってこれなのか俺は!!
何でもない顔をして心の内で情けない自分に憤慨しているとユウヒがぽつりと言った
「それは命令?」
その瞬間俺の心は重くなり、かなり深いところまで沈んでしまった。まぁそうだよな、そうなるだろう。命令じゃないとな
よく考えたらいい日じゃないか天気がいいからと山に登って女の子と触れ合えて、幸せだろうよ。なぁ
「命令じゃない。ユウヒが嫌ならいいんだ、それで」
すると行為が終わってから大分調子を取り戻していたように見えたユウヒだったが、また下を向き赤面してこんなことを呟いた
「・・・まだ、ヒミツ」
「え?」
「それより!」
俺の声に被せるように、声を張ってユウヒが言う
「お前の家・・・知りたい」
「え、それはいいけど、なんで?」
するとユウヒは一瞬目の奥を暗く沈めて逸らしたかと思うと、すぐ俺の方に寄ってきて顔を近づけこう言い放った
「お前!ここまでしといて・・・なんでって・・・。
・・・そうだ、逃がさない、ここまでしたんだ!逃がさない!責任、とれ、よ・・・」
あぁ俺はなんて幸せなんだろう。たまたま今日山に登ってよかった!自然の感謝だ!奇跡だろう!
「ユウヒ!大好きだ!!」
俺はユウヒの甘くて華奢で愛しい身体を目いっぱいに抱きしめた
「見てればわかる!いちいちユウヒに言わせるな!離れろ!きもいぞ!自重!自重!」
バタバタとユウヒが暴れるがそう簡単に離すなんてことはできない
そもそもユウヒの力なら俺なんか赤子のように引きはがすことだってできるんだから
本当に幸せ者だな俺は

とまぁこんな感じで、この後ユウヒは俺の家に来て晩飯を食べていった
それからは熊出山に行ったり町で遊んだりといろいろだ
梅雨が来て、あっつい夏が過ぎ、落ち葉が落ちて、雪が積もっても、ユウヒと俺はずっと一緒にいることになった
ユウヒと二人で駄菓子屋に行って若菜とすったもんだしたりしたけど、それはまた別の話だ。じゃあさようなら!
おちま

33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2021/05/24(月) 16:35:37.05 ID:lauXx9KY


の一文字が見切れるという失態
イラスト書いてくれた人ありがとうモチベーションになってました


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