一年間暇だしなんか続けようとおもう #86

86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2020/02/01(土) 22:47:19.61 ID:OHhCTx79

少女は一人でした
いえ、友達がいなかったわけではありません
寧ろ学校では友達に囲まれていたし、授業も真面目に受けていました
しかし両親が共働きで家には誰もおらず、帰ってくるまで一人で待たなければなりません
少女は玄関で鍵を開けようとしますが、冬で手がかじかんで思うように刺さってくれません
金属製の重い扉を開け、中に入ります
ダンパが壊れているのか扉はすごい音を立て閉まります
なので少女は丁寧に扉を閉めることにしていました
両親がいるときは大丈夫なのに、一人になると閉じ込められたような気がしてすごく怖いのです
「ただいまー…」
少女は必ず家に挨拶をするようにしていました
二階にある自分の部屋に行き、ランドセルを降ろします
階段を駆ける音も、机の椅子を引く音も、鉛筆のこすれる音も、
それだけしか聞こえないことが少女は不安でした
日が落ちて、家の中は一層暗く、静かになりました
こうなると少女は部屋から一歩も出られません
トイレに行くのも、飲み物を取りに行くのも、テレビでさえ怖くて付けられません
少女が部屋の隅でじっとしていると、扉を開ける音がします
少女はこの時が一番嫌いでした。もしお母さんじゃなくて知らない人だったらどうしよう
二階に来て捕まえられたら逃げられない。そんなことがいつも頭を巡ります
「ただいまー!美羽ー?いるー?」
お母さんの声です。強張っていた少女は急いで部屋から飛び出てお母さんに会いに行きます
こうなるともう、窓の打ち付ける音も、階段を下る音も少女は何も怖くはありませんでした

このスレッドを全て表示


このスレッドは過去ログです。