街にある百貨店の一角にロボット教室なるものがあった
入会は小学生までのそれはどうやらキットを使ってロボットを組み立て、
歩行させることが目的のようだった
入り口付近にあるため、ネギや、牛乳、惣菜を買いに行く私はいつもそれを目にしていた
そのロボット教室の前、Eスポーツのビラや、中学校入学のパンフレットが置いてある横に
一台のロボットが置いてあった。まぁペッパーくんなわけだが
そのペッパーくんの首にももちろんパンフレットがかけられていた
電源は入っておらず、半分物置のような扱いでひっそりと佇んでいる
きっとロボット教室だからという安直な理由で置いたのだが、させることもないので厄介払いされたといったところだろう
しかし、そこはロボット教室、大人はもう気にしなくなったが、子供たちはペッパーくんの手や足を
好きな方向に変えて遊んでいた
いつもは散らかっていて取り留めがないのだが、たまに謝っていたり、ガッツポーズをしていることもあり
夜遅く買い物に行く私はそのおかしい姿を見てクスリとしていた
子供からの関心が強いからか、いつからかそのペッパーくんはよく働かされるようになった
夏ははっぴを羽織り、冬はサンタの帽子を、暇さえあればパンフレットを肩にかける
手は中指を立て、腕は関節を曲げられ背中を向き、顔は天を仰ぐ
毎日、毎日、ペッパーくんは違う出で立ちだった
ある日、私がロボット教室の横を通った時のこと
いつもはパンフレットがかけられている首にホワイトボードがかけられていた
「みんなよく頑張ったね!お疲れ様!」と
きっと教室の先生が子供用に書いたものだろう。キットを作り終えたのか、ひと段落着いたのか
そうとわかっていても私はつい、頑張ってるのは君の方だよと思ってしまった
それからなんとなく、ペッパーくんの関節があらぬ方向に曲がっているときは元ある方向に戻すようにした
ロボットにとって、どの方向が楽なのか、私にはわかりようもないことだが