一年間暇だしなんか続けようとおもう #199

199以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2020/10/25(日) 19:05:08.22 ID:QnFBJ+/d

俺の家から徒歩1分の所にあるこの店は、とてもまずい料理を出す店だ
甘い卵のオムレライス、自家製のかまどで焼いたという生焼けのこだわりピザ
郊外の端で生きる独身の私にとって、食事は与えられるものであるから、俺はここに来る
店先は周りのうっそうとしたアパート群には似つかない煌々とした光を放っている
ガラス戸を開け洒落た店内はテーブル席が三つとカウンターがいくつかあるが誰も座ってはいない
メニューをめくり目についた焼きめしを注文する
別にどれでもいいのだ。腹を満たすためだけの食事だ
そしてそこそこの金を取る。似合わないのだ、独身者ばかりが住むこんな場所でこんな店は
店から10m先にある安くて早い牛丼屋に誰もが行くのは当たり前のことだ
せめて学生町のようなところなら彼らの憩いの場所になったかもしれないのに
運ばれたシャキシャキしたキャベツの入った焼きめしを水と一緒に流し込みながら俺はそんなことを考えていた
どうせこの店はすぐに潰れるのだ、そして閑散とした店だったところにまた新しい店が出来てごく当然に商売をするのだろう
私は席を立ち会計に向かう
すると席を案内した店員とは別の人間がいつの間にやらカウンターに立っていた
あぁ、まただ、またこの男なのだ。俺は少しの安堵と彼に対するやるせなさを感じいつものように財布を開く
きっとこの店の店長なのだろう。最後には必ず出てきて自らが会計をするのだ
そのときニカッと歯を見せて笑い、「おいしかったですか?」と聞いてくる
すごくまずいよとは言えず俺は小さくうなずくとそれはよかったです、などというのだ
彼のいつもと変わらない心からのまたお待ちしておりますを背に自宅に向かう
あのまずい飯を出す店長のせいで俺はこの店がつぶれるまで、あししげくここに来てしまうのだろう
本当に厄介な人間もいたものだ

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