一年間暇だしなんか続けようとおもう #167

167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2020/05/05(火) 14:41:24.09 ID:xIEphtI6

彼女は忙しかったのだ
仕事をしていたからでもあるし、日々の喧噪というものを聞くのが嫌で無意識に孤独になろうとしていたからでもあった
だからヒヨドリに啄まれ落ちた花柄が風で集まっているのをハイヒールで誤って踏みつけるまでそれに気づかないでいたのだ
顔を上げると白亜のビルの間にひっそりとたたずむ小さな桜並木を見つけた
こんなところにあったかな?と思いはしたが後ろに聞こえる雑踏から押し出されたように感じ、ついその小道を進んでみることにした
桜の散った並木は井水のひんやりとした冷気に熱を帯びた風が混ざり合って心地よい初夏を演出していた
入ってすぐ気づいたが桜は手前に門のように構えている二樹だけでその向こうには紫藤が水路をカーテンのように覆っていた
彼女は近くの腰掛石に静かに座りもったいないことをしたなぁと後悔の念にとらわれていた
それは彼女の中で消し飛んでいた春という季節に思いをはせたり、冬が終わり春に流れるその移ろいを捉えたいと考えていたからかもしれない
月に異にみせるその表情をつい自分の中の特別にしたくなったのかも・・・。
だから時折、彼女はまるで異世界の扉でも叩いたのかと思うほどパッと現れるその小道に入っていくのだった

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