一年間暇だしなんか続けようとおもう #120

120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2020/03/01(日) 02:08:36.26 ID:Ia6Nt+xj

「に、逃げるか」
翻って山をかける。青空のもと、一人と一匹のクマごっこだ
「は、早いぞアイツ」
クマ野郎は四本の足で地面をえぐりながら進んでくる
「直線だと、負けちまう。山の中に入ろう」
俺は山道をかけるのを止めて木々を分け入り進むことにした

「ハァハァ」
息も絶え絶えになりながら、後ろを振り返る。
「…ここまでくれば大丈夫か」
人型の姿が見えないことを確認して腰を下ろす
「クマー」
「・・・まあ臭いしな」
鼻をつまみたくなる臭いを漂わせて、そいつが目の前に立っている
「どうなってんだよ…」
頬から出た血は固まったが、代わりに汗がドバドバと出てきた
「全力で走ったのに」
絶望がやってきたけど、案外と怖くない。まあ、俺の人生なんてそんなもんだよな。悲しんでくれる友達も出来ず、孤独に死んでいくんだ。いや、むしろ幸運じゃないか。こうして訳の分からないクマ野郎に食べられて、自然に帰ることが出来るなんて。事故や、病気で死んで骨だけになるよりよっぽどいい。殺すなら一思いにやってくれ、痛いのは嫌いなんだ。
あ、そういえばかーちゃんに挨拶してないや。ごめんな、卵焼きうまかったよ。出来の悪い息子は、今、新しい世界に飛び出すから
「オイ」
「なんだよ。早く殺せよ」
死に際さえ静かにさせてくれないのか
「オレ、オマエカジル、デモ、ツカレタ。オマエ、ハヤイナ」
「そうか、でも結局食うんだろ。俺を食って長生きしろよ」
「ショウブ、シタイナ」
「…勝負?」
「コレ、トッテミナ」
クマ野郎が耳に付けているイヤリングを指差す。
木漏れ日に当たって飾りの貝殻が虹色に輝いている
「…俺がそれをとったら逃がしてくれるのか?」
「ナンデモシテイイ」
「…何でも、だって?」
自分の中の何かでふわりと何かが灯る。なんでもってことは、つまり言うことを聞かせたり、このまま逃がしてもらえたり、はたまた体の自由を奪ったり
そういうことを言うんだよな…
「ふへぇ」
「キモイ」
「うるせぇ!そうとわかったらやるしかねぇ」
走った疲れは「なんでも」と共に吹き飛んだ。そうだ、やってやろうじゃないか。このクマ野郎に勝って、ウフフなことをしてやるぞ!
ならまずは、

▶ 足払い
  距離をとる
  飛びつく

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