ココア「ん?どうしたのチノちゃん?」
チノ「えっと……。」
おずおずと尋ねてみたものの、本当に聞いていいものかと、チノは逡巡した。
ココア「チノちゃん、最近元気なさそうだけど、何かあった?」
チノ「なんにも……。」
ないです、と続けようとする前に、チノは口をつぐんだ。
原因である張本人にそんなことを聞かれ、なにやらムカムカとした感情が胸に溢れてくる。
チノ「どうして……。」
衝動に口を押し開かれる。
チノ「どうして、最近私に抱き付いてこないんですか?以前はしつこいぐらいに抱き付いてモフモフしてきたくせに、もう飽きてしまったんですか?」
恥ずかしいとわかっていても、言葉が止まらない。チノはココアを問い詰めないわけにはいかなかった。
ココアからチノへのスキンシップが減ってから、およそ一か月。
ココアは、チノを抱きしめることによってエネルギーをもらっていたのかもしれないが、実は、チノの方こそ、肌を通してココアから愛情というエネルギーをもらっていたのだった。
チノ「私、変なんです。ココアさんに抱き付かれるのなんて嬉しくなかったはずなのに、いざココアさんが抱き付いてこなくなると物足りなくなって、嫌な気持ちになって、こんなのおかしいってわかってるのに、でも……。」
ココア「チノちゃん!」
ココアは叫び、散らばった宝物を掻き集めるようにして、チノを両腕で抱きしめた。
ココア「私のほうこそ、おかしくなっちゃったんだよ。私、もう、チノちゃんのこと気軽に抱きしめられない。チノちゃんのことが……好きだから。」
チノ「えっ!?」
混乱するチノに向けて、ココアは辛そうに、絞り出すようにして、思いの丈を打ち明ける。
ココア「好きすぎて、もう、だめなんだよ。チノちゃんのことを想うとドキドキしちゃって、だめ……なの。」
愛してるよ、チノちゃん。
ココアの腕の中で、ココアの暖かさを肌で感じながら。チノは、愛の告白を、たしかにその耳で聞いた。