「ちょっと、なにその反応。なんか恥ずかしいじゃん」
「あ、いや。思いの外ちゃんとした答えだったから……」
「なにそれ。じゃあ須藤はなんだと思うの?神様の対義語」
特に考えていたわけではなかったが、答えはするりと出た。
「0じゃない?神の対義語は0」
「0?」
「対義語というか概念の問題だな」
「……へ、へえー。そうなんだ」
あっさりとした返事がきた。確かになんだか恥ずかしい。
「……成田の反応だって微妙じゃねぇか」
「う、うん。いやなんか難しいね、色々と」
「神の対義語」の前に着いた。体調はもうとっくに良くなっていた。人はそこそこ並んでいるが、ジェットコースターの時ほどではない。次の組には乗れそうだ。そんなことを思いながら列の最後尾についた。
「へえこんなのなんだ」横で成田が言った。
高さは10mもあるだろうか。その高さから鉄でできた足が伸び、今まさに左右に揺れている。足の先は大きな円盤のようになっており、そこに客が座っているようだ。乗客は30人以上はいるだろうか。円盤は数字の「0」のように少し歪んだ形をしていて、足が揺れるのに合わせてゆっくり回転している。少し離れた場所にいるにもかかわらず、空気を切る音や円盤が巻き起こす風が届いている。かなりの勢いで動いている。
「間近で見ると結構迫力あるね。すごいすごい」
「そうだな」と短く答える。さっきのジェットコースターの件があるのでつい身構えてしまう。知らないうちに握りしめていた右手に力が入った。