「それにしても、成田でも乗ったことないやつあるんだな」
「神の対義語」に向かいながら成田に問いかける。
「あ、うん。何個かあるよ」
「なんか意外だな」成田はネプランドで遊び慣れてる印象があった。
「友達とよく来てたけど、毎回同じようなのに乗っちゃうんだよね。暗黙の了解みたいな感じで。次はあそこ行こうって、自然とみんな次のアトラクションに向かうの」
「同じようなとこ行って飽きないのか?」
「うーん。みんなと話してれば楽しいしねぇ」
毎回同じアトラクションに乗ってたら話題なんてなくなりそうなものだが。何を話題にしてそんなに盛り上がるのだろう。
「ふうん。まあ俺も『神の対義語』には乗ったことないけど。小さい頃は乗りたいとも思わなかったな」
「楽しそうではあるけどね、こういうの。ただちょっと名前が変というか、とっつきにくいよね。『神の対義語』とか言われてもよくわかんないし」
それはわかる。どことなく哲学的な響きだ。遊園地には全くそぐわない上に、そもそもアトラクションとの関連がわからない。
「なんだと思う?神の対義語」
「ええ?わかんないよ。難しいもん」困ったように成田が答える。
「いいからいいから。なんか適当に」
「えーなんだろう」顎に手を当てて考えるような仕草をする。そのまま少しの間黙っていたが、ふいに「人、とか」と言った。
なかなか深い答えが来た。どうやら真面目に考えていたらしい。「お、おお。なるほどな」としか言いようがなかった。