ジェットコースターは縦横無尽にレールを駆け巡った。その間、ずっと成田は歓声をあげ、俺はひたすら耐えていた。ようやくジェットコースターがブレーキを掛けた頃には俺はかなりぐったりしていた。視界は涙でぼやけ、耳鳴りがしていた。少し頭痛もする。
ジェットコースターはゆっくりと建物の中に入った。「おかえりなさーい」というスタッフの声が聞こえ、ジェットコースターが止まった。安全バーを上げて降りると成田が
「いやぁ楽しかったねぇ!」
と言った。俺が力なく
「そうだな」
と答えると、成田はじっとこちらを見てから
「もしかして須藤、泣いてる?」
と言った。
「いや泣いてないけど」
「だって、涙が……」心配そうに顔をしかめている。
「あ、いやいや。これは風が目に入ってから出ただけだから。泣いてるわけじゃないから大丈夫」勘違いされては困るので全力で否定する。
「そうなの?」
「そう。心配ない」
普段通り振る舞おうと、持ち物を預けてあるロッカーに向かいながら成田に向けてこう言った。
「でも、ちょっと休むか」