物語とか書いてみる #29

29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2017/01/07(土) 20:12:10.40 ID:QeP/IaMk

 内臓がぐぐっと持ち上がる感じがして、空中に投げ出されたのかと思った。前を向くと、人や建物が小さく見えていて、自分がいかに高い場所にいるかを思い知らされた。落ちる、と思った。

 さっきまでとは打って変わって、ジェットコースターはぐんぐんスピードを上げていく。恐怖と慣れない浮遊感に、思わず安全バーをぎゅっと握る。隣では成田が楽しそうな声を上げている。

 下の方には水平にレールが延びている。このまま地面にぶつかるのではないかという速度で落ちていたジェットコースターが、突如水平になる。その衝撃に耐えられず、姿勢が前傾になる。姿勢を立て直すことができないままカーブに差し掛かった。車体が横に傾き、前傾姿勢のまま遠心力で引っぱられる。カーブが終わると再び坂を上がり、すぐに降下した。ジェットコースターの車輪の音と風の音でうるさいくらいだった。

 上昇、下降、カーブ。上下左右に激しく揺さぶられるうちに何がなんだかわからなくなった。今どこを走っているのか、どのくらい時間が経ったのかなど考える余裕もない。目を閉じることもできず、必死に前を見据えていた。風が目に入って涙が出てくる。

 何度目かのカーブを過ぎると、レールが上に延びて反り返っているのが見えた。見たことのないコースに、これからなにが起こるのか理解する間もなくジェットコースターは反り返ったレールを進んでいく。進むにつれ、背中が座席に押し付けられる。段々とお尻が座席から離れ、それと同時に肩が安全バーに触れるようになる。お尻がすっかり座席から離れ、肩に全体重がかかるようになると、足の下の方に空が見えるようになった。はるか頭上には地面が広がっている。その時ふと、成田が人差し指をくるんと回していたことを思い出す。もう勘弁してくれと、ほとんど泣きそうになりながら思った。

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