物語とか書いてみる #27

27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2017/01/07(土) 20:02:09.99 ID:QeP/IaMk

 初めて乗るジェットコースターに胸を踊らせながら席に座る。座席は硬く、つるつるしていた。左隣の席では成田が顔をほころばせてそわそわしている。すでに安全バーを下ろしていた。

「いよいよだな」バーを下ろしながら言うと

「うん。楽しみ」とにこにこして答える。

「なんか緊張してきた」

「泣かないでよ、須藤」

「泣かねぇって」

「スタッフが安全バーの確認を致しますので、バーを下げてお待ちください」とアナウンスが入った。右に立っていたスタッフが安全バーを触って確かめる。さっきは容易に動いたバーが、今は全く動かない。かなり心強い。

 乗客全員の安全バーを確認し終えると、スタッフが横に戻ってきた。そして、マイクを付けたスタッフが「それでは、いってらっしゃーい!」と言うと、がたがたと車両が動き出した。横に立つスタッフがタッチをしようと手を差し出したので、右手でそれに応じる。すれ違いざまに「いってらっしゃい」と声をかけられた。

 ジェットコースターはレールの上をゆっくりと進んだ。少し進むと大きなカーブに入り、それを過ぎると外に出た。しばらく建物の中にいたので太陽の陽射しがまぶしい。前方ではレールが結構な上り坂になっている。まるで空に向かって延びているかのようだ。間近で見ると、地上から見たときよりも迫力があった。かなり高い。後ろの乗客たちは「えー!」「あんな高いの!」と悲鳴を上げている。

 その坂を、ジェットコースターは速度を落とさずに淡々と登る。背もたれに自分の体重がかかる。景色はみるみる高度を上げていく。下を見るのにも勇気が必要になる頃には、頂上はもうすぐそこだ。

 がたん、と揺れて頂上に着いた。車両が水平になる。空の向こう側が目線と同じ高さだった。

「ねえ須藤」

 ふいに成田が声をかけてきた。振り向くと、成田が安全バーを軽くつかみながら楽しそうに微笑んでいる。後ろには雲ひとつない青空が広がっていた。

「今日は誘ってくれてありがとう。私本当に楽しみにしてたんだよ」

 ふたりの距離が近いからだろうか。目の前にいる成田の声は、周りのざわめきにも関わらずはっきりと届いた。

「よろしくね」

 視界が傾く。ざわめきがいっそう大きくなり、ジェットコースターは重力にしたがって落下を始めた。

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