階段を上がって2階に行くと、すでに行列ができていた。行列は、奥の建物につながる通路を通って上の階にある乗り場まで続いているようだ。行列は少し進んでは止まり、しばらくしてまた進む、を繰り返しながらゆっくり進んだ。
通路を通って乗り場のある建物に入ると、再び左手に階段がある。建物の中は音が響きやすく、行列のざわざわとした話し声やジェットコースターが止まるときのブレーキ音などで埋め尽くされていた。そういった音の中から時折、遠くの方で「いってらっしゃーい」という声が聞こえる。その声が聞こえる度、行列のざわめきが少し大きくなった。前に並んでいる3人組は「うわーなんか緊張してきた」「俺漏らすかも」「つーか漏れたわ」などと言っている。
階段の壁には乗る際の注意書やジェットコースターの全体図などが貼られている。初めてのジェットコースターに期待を膨らませながらそれらを眺めて列に付いていくうちに、乗り場のある部屋が見えてきた。 入り口からは、これから出発するのであろうコースターが見える。
「ピンクのジェットコースターってかわいいよね」
隣で成田が言った。かわいいかどうかはわからないが、目立つとは思う。ピンク一色で塗りつぶされた車体に大きな白い字で「NEP COASTER」と書いてあれば人目を引くだろう。
「なんか桃っぽいよな」
「わかる。かわいい」
また列が動いた。乗り場の部屋に入ろうとしたところで、入り口の前にいたスタッフに「こちらで2列になってお待ちください」と止められた。中から別のスタッフの「いってらっしゃーい」と言う声が聞こえる。がたがたという音が聞こえ、ジェットコースターがゆっくりと外へ出ていくのが見えた。部屋を覗くと、中では乗客が2列になって並んでいる。床にはレールが敷いてあり、まっすぐ外へ延びている。俺たちは今並んでいる乗客の次の組のようだ。
「ねえねえ、私たちもしかしたらジェットコースターの一番前に乗れるんじゃない」と成田が言った。
「ああ、そうかもな。順番的に」
「私一番前は初めてだよ。どきどきするなぁ」