1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2016/12/30(金) 12:59:31.23 ID:4dzhcYgh俺の腹部に突き立てられた男の拳はめりめりと刺さり、俺は音もなくその場に膝をついた。
「がはっ…」
俺の口から血がぼたぼたとこぼれる。俺はなすすべもなく地面に伏した。
「おい、俺!」
倒れた俺に気を取られたお前らに、男は容赦なく襲いかかる。
「よそ見してんじゃねえ!次はてめぇだ!」
俺には目もくれず、男はお前らに鋭い右ストレートを放った。
「くっ!この野郎……」
それをお前らは間一髪のところでよける。息をつく間もなく男は立て続けに拳を振るう。お前らには反撃する間ももない。男はかなりの手練れだった。
だが、俺とお前らも決して弱者ではない。俺とお前らはその昔、まだ彼らが20代だった頃に、ちびっこ相撲大会に乱入し、大会を制している。この辺りでは無法者として通っていた。
「ひゃっはあ!おらおらどうした!」
男の攻撃は激しさを増していく。お前らはどんどん追い詰められていった。このままではお前らも直に男の鉄拳の餌食になるだろう。
(どうすればいい……)
「くらえ!」
男は体を大きくひねって左フックを繰り出した。お前らは体を屈めてかわす。
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2016/12/30(金) 13:04:24.34 ID:4dzhcYghその時、男の髪が不自然に傾いた。なんと男はヅラだったのだ。男は日頃のストレスによって、若くして多くの髪の毛を失っていた。突然の出来事に男は体の動きを一瞬止めた。
(ここだ!)
それを見てお前らは反撃に出た。素早く体を起こし、右の拳を振りかぶる。拳に全体重を乗せるべく、右足で地面を思いきり蹴り、男の左頬をめがけて右腕を振った。
しかし、お前らの右手は男の頬に届かなかった。実はお前らは先程から地面に落ちていたバナナの皮を踏んでいたのだ。地面を蹴った際、そのバナナの皮に滑って体勢を崩したのだった。
そこにすかさず、気を失っていた俺が屁を放った。ブビュビュビュリュと大きな音が響く。
男のヅラが地面に落ちた。男の頭部が日差しを受けてきらりと光る。男は静かにヅラを拾うと
「今日はここまでにしといてやる」
と言ってお前らに背を向け歩き去った。
お前らは俺の上にかがみこみ
「おい俺!だいじょうぶか!」
と言った。俺は
「……した」
と呟き返した。どうやら意識を取り戻したようだ。お前らは安心して
「どうした?なんて言ったんだ?」
と聞いた。俺は今度ははっきりとした声で
「漏らした」
と答えた。その言葉にお前らはあわてて俺のズボンを見たが、そこには茶色の染みができていた。
完
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