「......君は、ゼミの連中より賢いかもしれないね」
「ゼミ?......セミ?」
「そうかもね、夏前になるとミンミンうるさいから」
「大がくにもセミいるんだ!」
「うん。沢山ね」
「そっか......私も先生の大がく行きたいなぁ」
「うん?......君なら、あと少し勉強すれば来れるさ」
「ほんと!?うれしいな!」
ニコニコしながらはしゃぐ少女。最近は笑顔を良く見せるようになった。
「......じゃあ今日はこの本を貸そう。私も好きな本だ」
そう言って鞄から取り出した本を手渡す。
「......なんかむずしそう......」
「大丈夫だよ。完璧に分からなくてもいいんだ......読み終わったら返してくれればいい」
「ありがとう、先生。......でも」