「......へんなおねえさん」
そう言うと少女は少し笑った。
つられて私も少し笑う。
私達が最初に話したのはそれだけだった。
その後も何度か病室に顔を出すうちに、少女に合うのはすっかりと習慣になっていた。
少女の家族はシングルマザーだったそうで、身近な少女の身寄りは母方の祖母一人だそうだ。
その祖母も腰を悪くしており、なかなか病院までこれないのだとか。
私にはここに来る義理は無いが、理由はあった。
いつも寂しそうにしている彼女が、私が顔を見せた途端に嬉しそうに振り向く。そんな些細な事が、私を病室へと向かわせていた。
「先生、今日もきてくれたんだ」
「ああ、君に会いたくてね」
そう言ってベッドの横の椅子に腰かける。
「ひまなの?」
「......うん。......大学教授なんて暇だらけなのさ」
「ふーん......あ、そうだ。この前の本読み終わったよ」
少女から本を受けとる。ちょうど先週に貸した悪魔と一緒に簡単な算数を楽しむ本。
「......は、早いな。面白かったかい?」
「うん!とっても。でも、少しかんたんだったかも」