男は志願して先頭に立ち、進軍していきました。
化け狐は、男を目にすると狂ったように暴れ回りましたが、これまでのような被害は出ませんでした。
参謀「我々には加護が付いている!」
参謀「妖術があろうと中らなければどうということはない。進め!追い込め!」
参謀「崖に追い詰めることが出来たぞ」
参謀「さあ、化け狐。後ろは深い谷。もう逃げることも出来まい」
男「止めは、私が」
男は前に出て、じっと化け狐を見つめました。化け狐もまた、男の眼をじっと見つめ返していました。
男はゆっくりと剣を抜き、構えました。
男「…行くぞ!でやあ!」
「男殿の剣も逸れたぞ」「男殿の加護でも、化け狐は討ち取れぬのか」「もう手立ては無いのか」
男は二度剣を振るいましたが、真っ直ぐな太刀筋にもかかわらず、化け狐を僅かに逸れ中りませんでした。
そして、化け狐だけに聞こえる声で男は言いました。
男「許せ、狐」
男は剣を投げ捨て、化け狐に飛びついて組み付き、そのまま取っ組み合い、遂には化け狐と共に谷に落ちてしまいました。