男が村に帰ると、村人たちから歓待されました。
男が不思議に思っていると、皆が口々に教えてくれました。
「男さんが捕らえられてしばらくして、近くの村々で鼠の害が増えたの。でも、この村は被害が少なかったの」
「狐のことを酷く馬鹿にしていた者の田畑が、鼠や雀の酷い害にあってたの」
「男の畑だけは、日照続きでも実りがあって、村は飢えずにすんだの」
「男は特に狐様に良くしておったから、狐様の加護も強かったのじゃろう」
「そういえば、あの狐を見かけないねえ」
男「そうだったのですか。皆さん、咎人だった私を受け入れてくれて、ありがとうございます」
男「ですが、私は思うところがあり旅に出ます。大変お世話になりました」
村人たちは、せめてもの餞別にと、男の旅支度といくらかの路銀を渡してあげました。