泥棒「!」
男「……だれか……いるのか?」スタスタ
泥棒 (や、ヤバイっ……見つかるっ!?)サッ
男「……なぁ」ガチャッ
泥棒 (……こ、こうなったら!)チャキッ
ガチャッ
泥棒「う、動くなっ!」チャキリッ
男「……」スッ
泥棒「動いたら……さ、刺すぞっ!」スッ
男「……してくれ」
泥棒「……え?」
男「……刺してくれよぉっ!いっその事!!」
泥棒「!」
男「……だれか……いるのか?」スタスタ
泥棒 (や、ヤバイっ……見つかるっ!?)サッ
男「……なぁ」ガチャッ
泥棒 (……こ、こうなったら!)チャキッ
ガチャッ
泥棒「う、動くなっ!」チャキリッ
男「……」スッ
泥棒「動いたら……さ、刺すぞっ!」スッ
男「……してくれ」
泥棒「……え?」
男「……刺してくれよぉっ!いっその事!!」
泥棒 (な、なにいってるんだコイツ……)
泥棒「ほ、本気だぞっ、本気で刺すぞっ!」スッ
男「……ついこの前」
泥棒「……あん?」
男「ほんの一週間前。……娘が死んだんだ」
泥棒「……えっ?」
男「……まだ七歳だった。妻は三年前に先立って。これから俺が守ってやらないとって決めたのに……」
泥棒「……ど、どうして?」
男「……幼稚園の送り迎えの途中。トラックが俺の車に突っ込んだ……」
男「……娘の忘れ物を、取りに行ってる間に……ほんの数分の間だった……」
泥棒「……そりゃ……お気の毒……にな……」タジタジ
男「……泥棒さんよ」
泥棒「……?」
男「なーんにも無かっただろ。この家」
泥棒「え?……ま、まぁ……酒瓶とその他小物が少々……か」
男「いいよ。くれてやるよ。……どうせ明日捨てるつもりだったんだ」
泥棒「……」
男「……ごめんな。身の回りの整理してる時に人にあったもんだから、つい話し込んじまった」
男「もちろん通報なんてしないから安心してくれ。……あ、金もあるぞ。持ってくか?」スッ
泥棒「……あんたは、明日死ぬつもりか?」
男「そうしようかと思ってる。もっとも、あんたが刺してくれるなら別だがね」
泥棒「……俺は殺し屋じゃない」
男「……すまん」
泥棒「へ、泥棒にあやまる奴なんか居ないぜ」スッ
泥棒「……なぁ。あんたの気持ちは変わらないかも知んないけどよ」
泥棒「あんたや、あんたの娘のさんの話をもっと聞かせてくれないか?……明日までで良い」
トクトクトク
泥棒「旅立つ前に、せめて一献だけでもよ」スッ
男「……」スッ
泥棒「……つっても、あんたの酒だけどな!」ニカッ
男「……馬鹿野郎。泥棒と酒なんて飲めるかよ……」
男「……」
泥棒「……だよな。すまねぇ……じゃあ、俺は」
男「だけど……死ぬ前にアンタみたいな人との見交わしたい……」ボロッ
泥棒「……」
泥棒「……へっ」ニカッ
泥棒「……よしっ!そうと決まったら呑むぜぇー!なぁっ!?」ガシッ
男「……」コクリッ
その日、久しぶりに暖かさに触れた気がした。
泥棒は良い呑みっぷりで、次第に気分も晴れていった。
そのあと二人で目茶苦茶セックスした。
娘と妻の事はなんとなくどうでも良い感じになった。
俺は明日から、コイツ(泥棒)と生きていくんだから。
まったく、何にもない筈の俺の家からとんでもないものを盗まれちまったぜ。
でも、これからよろしくな。急転直下に出会った、運命の恋泥棒さん。
完