「なぁ白いの、お前はなんで人語を喋れるんだ?」
「喋れるものは喋れる。それでいいではないか」
何度目になるか分からない問いを投げかけると、何度目になるか分からない答がかえってきた。しかし、今日の私は簡単には食い下がらない。奴の秘密を聞く策があるのだ。
「まぁお前のおかげで前よりは退屈しなくなったから良いっちゃ良いんだがな。ただ話してくれさえすれば……」
「っ! そ、それはッ!?」
私がビニール袋からあるものを取り出すと、奴は驚いてピョンと飛び跳ねた。
これは私がアルミ缶集めで稼いだ2千円を叩いて、アメ横で買ったマグロの中トロ500グラムだ。マグロ好きの奴の事だ、流石にこれで口を割るだろう。
「さて、話してくれればこれを丸々お前にやるぞ?」
「フン……。どうせ話しても理解も納得もできまいが、マグロを出されては仕方無いというものだ」
奴はマグロから目をそらさずにそう言った。好みを探るべくゴミ捨て場を張り込み、2千円を出し甲斐があった。作戦大成功だ。
「白いカラスが喋るのを許容している私だ、どんなことでも納得してやる。ささ、話してもらおうか」