ダンボール「……」
おいたん「……愛してるよ」
ダンボール「えぇ……私も……」
チュッ
???「素晴らしい!僕はここまでの才能溢れる人を見たことがない!」
おいたん「……?」
???「あっあぁ失礼、ついあなたの歌声に心がエキサイトしてしまって……。僕は劇団二季のプロデューサーをやっています、二季と申します」
おいたん(劇団二季……?聞いたことねーぞ……。どこの田舎もんだよ)
二季「あなたの才能は素晴らしい……!ぜひ僕の劇団に入りませんか!?」
おいたん「はぁ?いきなり来てなに言ってんだ。入んねーよそんなもん」
二季「どうして!?君の才能があれば、劇団の主役だって簡単になれる!それに……」
二季「こんな生活ともおさらばできますよ」
おいたん「……」
二季「まぁ、ここまでに至る大きな事情があるのでしょうけれど……」
二季「いい大人であるなら、どんな選択が賢いかわかるはずです」
おいたん「……帰んな」
二季「なっ……!」
おいたん「俺はもう誰とも歌わねーよ。どんだけ金を積まれてもな」
二季「……そうですか」
二季「わかりました。今日のところは名刺だけ置いて帰ります」
おいたん「そうしてくれ」
二季「でも僕は諦めない。こんな人材が相応の舞台で歌わずに腐っていくなんて、プロデューサーとして許せません」
おいたん「……」
二季「では、また来ます」
おいたん「けっ……。二度とくんな」
ーーーーーーーーーーーー
俺にとってこの公園がステージだ
広い舞台、俺を認めてくれる仲間
誰一人として、俺の文句を言う奴なんていない
おいたん「この~♪世界を~」
雑草「イェイィイエィ♪」
おいたん「ぶっ壊すううううううう~!!」
デンッ!
おいたん「はぁ、最高に気持ちいいな~!」
二季「こんにちは」
おいたん「……」ジー
二季「そんなに睨まないで下さいよ……」
おいたん「俺はな、今最高に晴れやかな気分だったんだ。でもお前のツラが目に入った瞬間サングラスをかけたみたいに真っ暗になった」
二季「まぁまぁ……。どうです?そろそろ入ってくれる気になりました?」
おいたん「いいや全く」
二季「あなたも強情ですねー。実はこの間帰ったあと、ちょっと調べたことがありましてね。それをあなたに聞いてもらいたい」
おいたん「勝手に話してな。俺は瞑想して宇宙に旅立つから」
二季「二年前、『ミュージカル界のボン・ジョビ』と謳われたとある天才歌手が突然この業界を去った」
二季「若手の頃から才能に恵まれ、弱冠二十歳で日本最高峰の『おまんこ倶楽部』に入団」
二季「彼が出る舞台のチケットは発売から10分で完売。その人気は才能によるものだけじゃありませんね。彼自信も努力を怠らなかった」
二季「だがある時期を境に、彼はステージから姿を消した……。おいたんさん、あなたいつからここに?」
おいたん「覚えてねーよそんなもん」
二季「……」
二季「まぁ、私はもうあなたの正体を知っている。ますます諦める訳にはいかなくなりました」
おいたん「俺とそいつは別人だ。完全にあんたの勘違いだな。俺はただのホームレスだ」
二季「それはどうでしょうね……。仮にそうだとしても、あなたの才能は僕の劇団に必要であることに変わりはない」
おいたん「……」
二季「それで、今日はちょっと別の方向からアプローチをか