## 短編小説『モンブラン通り法律事務所』
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>ジュネーブの旧市街に位置する、モンブラン通り法律事務所。
>重厚な木製の扉を開けると、そこは古めかしいながらも洗練された空間が広がる。
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>書棚には分厚い法律書が並び、窓からはレマン湖の青い輝きがわずかに覗いていた。
>その一角にあるオフィスで、カナダ人弁護士のジェフ・ロバートソンは、一通のメールを読み終え、思考を巡らせていた。
>彼にとって、現代社会のあらゆる事象は、法の網の目を通して再構築されるべき問題だった。
>その日、ジェフは思いがけない再会を果たした。
>ランチを済ませ、心地よい風に吹かれながら花時計広場を通りかかったときのことだ。
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>人混みの中に、見慣れた顔を見つけた。経済誌『ジュネーブ・マルシェ』の副編集長、カミーユ・ルコントだ。
>彼女は、マギル大学時代のクラスメイトであり、ジェフとは旧知の仲だった。
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>「カミーユ!まさかこんなところで会うとは!」
>ジェフは思わず声を上げた。
>カミーユも驚いた顔で振り返り、瞬く間に笑顔になった。
>「ジェフ!本当に久しぶりね!元気だった?」
>しばし、二人は学生時代の思い出話に花を咲かせ、尽きることのない旧交を温めた。そして、話題は自然と彼らの専門分野、すなわち経済と法律へと移っていった。ジェフはカミーユを誘い、彼のオフィスへと足を運んだ。
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>### 暗号資産のレゾン・デトル
>オフィスに着くと、ジェフはデスクに座り、コーヒーを淹れながら切り出した。
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>「実はカミーユ、欧州中央銀行から相談が持ち込まれているんだ。
暗号資産を取引貨幣として扱うべきか、それとも資産貨幣(金融資産)として扱うべきか、彼らも判断に迷っているらしい」
>カミーユはソファに深く腰掛け、腕を組んだ。
>「ジェフ、私の意見としては、暗号資産を取引貨幣として扱うか資産貨幣として扱うかは、本質的には重要ではないわ。もっと根本的な問題がある」
>ジェフは興味をそそられ、彼女の言葉を待った。
>「もし暗号資産の売買を証券取引と同列に扱い、当局が取引を監督するなら、**暗号資産のレゾン・デトル(存在意義)が消滅してしまう**わ」
>カミーユは断言した。